ジャズの巨匠たちが奏でる至高のバラード集：アート・テイタム＆ベン・ウェブスター・クァルテット＋3
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
JAZZの時代背景：スウィングからビバップへ移り変わる1950年代
1950年代のジャズは、スウィングからビバップ、そしてクールジャズへと大きな転換期を迎えていました。この時代のジャズシーンは、革新と伝統が混在しており、アート・テイタムやベン・ウェブスターといった伝統的なスウィング・スタイルの巨匠たちがその輝きを放ち続ける一方で、新しい世代がビバップという革命的なスタイルを開花させていました。
テイタムとウェブスターが1956年に共演したアルバム『アート・テイタム～ベン・ウェブスター・クァルテット＋3』は、ジャズ史において特別な位置を占めています。
アーティスト紹介：伝説的ジャズピアニストとスウィング・テナーの巨匠
アート・テイタム (Art Tatum)
アート・テイタムは、1909年にアメリカ・オハイオ州で生まれたジャズピアニストで、驚異的な技術と豊かな表現力で知られています。彼は盲目であったにもかかわらず、そのプレイは「ヴァーチュオーゾ」と呼ばれるほど完璧でした。テイタムの演奏は、複雑な和声とリズムを駆使し、聴く者を圧倒します。その独自のスタイルは後世のジャズミュージシャンに大きな影響を与え、彼が亡くなった後も、その名声は色褪せることがありません。
ベン・ウェブスター (Ben Webster)
ベン・ウェブスターは、1909年にミズーリ州カンザスシティで生まれたテナーサックス奏者です。彼はデューク・エリントン楽団での活動を通してスウィング・スタイルの名手として名を馳せました。そのサウンドは、まろやかで深みのあるトーンが特徴で、特にバラード演奏において、その独特の温かみが際立ちます。ウェブスターの演奏は聴く者の心を揺さぶり、深い感情を引き出す力があります。
アルバム紹介：『アート・テイタム～ベン・ウェブスター・クァルテット＋3』の魅力
1. 時代を超えた名演：テイタムとウェブスターの絶妙なコラボレーション
このアルバムは、1956年9月11日にロサンゼルスで録音され、ジャズファンから長年愛され続けています。この時、テイタムは体調が悪化しており、録音からわずか2ヶ月後に亡くなります。それでも、彼の演奏は全盛期と変わらぬ技術と表現力を保ち、特にウェブスターとの共演は、スウィングとバラードを見事に融合させた名作です。アルバムは全体的にスロー・バラードを中心に構成され、リスナーに深い癒しを与えてくれます。
2. 「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」：この曲の決定的名演
アルバムの中でも特に注目すべきは、「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」です。この曲は、テイタムの繊細なタッチとウェブスターの感情豊かなサックスが絶妙に絡み合い、ジャズ史に残る名演とされています。スローテンポのバラードで、聴く者を静かに包み込むような美しさがあり、まさにこの曲の決定版と言えるパフォーマンスです。
収録曲の紹介と解説
1. 風と共に去りぬ (Gone With The Wind)
アルバムの冒頭を飾るこの曲は、テイタムの軽快なピアノとウェブスターの柔らかなサックスが絶妙な調和を見せる爽やかなスタンダードナンバーです。
2. オール・ザ・シングス・ユー・アー (All The Things You Are)
ジャズスタンダードとしても名高いこの曲では、テイタムの複雑な和声とウェブスターのリリカルなフレージングが光ります。
3. ジョーンズ嬢に会ったかい？ (Have You Met Miss Jones?)
明るく軽快なテンポで進行するこの曲は、テイタムの軽やかな指さばきとウェブスターのリズム感が絶妙です。
4. マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ (My One And Only Love)
アルバムのハイライトとも言えるこの曲は、ゆったりとしたリズムの中に深い感情が込められ、テイタムとウェブスターのデュオの美しさが際立ちます。
5. ナイト・アンド・デイ (Night And Day)
クールなスタンダード曲で、テイタムの洗練されたピアノがウェブスターの情熱的なサックスと完璧に融合しています。
6. マイ・アイデアル (My Ideal)
落ち着いたテンポの中で、二人のベテランの演奏がまるで会話をしているかのように絡み合います。
7. ホエア・オア・ホエン (Where or When)
静かな中にも深い情感が込められたバラードで、テイタムのピアノがリードしつつ、ウェブスターのサックスがそれに応えます。
別テイクの魅力
このアルバムには、「風と共に去りぬ」や「ジョーンズ嬢に会ったかい？」の別テイクも収録されています。異なる表現が楽しめるこれらの別テイクは、同じ曲でも異なる視点から楽しむことができ、テイタムとウェブスターの即興性やその場の感性を垣間見ることができます。
結び：癒しのジャズアルバムとしての価値
『アート・テイタム～ベン・ウェブスター・クァルテット＋3』は、二人の巨匠が織りなす極上のスタンダードバラード集であり、ジャズファンはもちろんのこと、リラックスや癒しを求めるリスナーにも最適なアルバムです。時代を超えて愛され続けるこの作品は、聴くたびに新たな感動と安らぎを与えてくれるでしょう。
下記URLはYouTubeにArt Tatum & Ben Webster Quartet – All the Things You Areが上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=MsZZkOgtMyI&list=PL3vVcwcNdjsvWhLlyOtuvrysPJkejnOQ_
これから、徐々にステレオ録音（1958年前後～）、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・
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