オーネット・コールマン『サムシング・エルス!!!』徹底解説|ジャズ史を変えたフリージャズの原点
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
ジャズの歴史を変えた革新の瞬間:『サムシング・エルス!!!』の魅力と背景に迫る
1958年、ジャズ界に彗星のごとく現れたアルトサックス奏者オーネット・コールマン。彼のデビュー作『サムシング・エルス!!! (Something Else!!!)』は、それまでのジャズの既成概念を打ち破り、「フリージャズ」という全く新しい地平を切り拓いた歴史的アルバムです。本記事では、ジャズの時代背景から、このアルバムの革新性、収録楽曲、そして制作に関わったアーティストたちのプロフィールまでを詳しく紹介し、オーネット・コールマンという偉大な音楽家の魅力を深掘りします。
ジャズの黄金期と新しい潮流:『サムシング・エルス!!!』が生まれた時代背景
1950年代後半、ジャズはその音楽的ピークを迎え、多様なスタイルが花開いていました。ハードバップやビバップが主流だった一方で、西海岸ジャズやクールジャズといったリラックスしたスタイルも広がりを見せていました。その中で、オーネット・コールマンは、ジャズの既存の枠組みに挑戦する大胆なアプローチを打ち出しました。
オーネットの音楽は、伝統的なコード進行や形式に縛られることなく、感情と即興性を重視した自由な演奏が特徴です。このスタイルは「フリージャズ」と呼ばれ、以降のジャズ史に多大な影響を与えることになります。そしてその原点となるのが、今回取り上げるアルバム『サムシング・エルス!!!』です。
オーネット・コールマンとは何者か? 革命児の音楽的ルーツと挑戦
若き日のオーネット・コールマン
1930年、アメリカ・テキサス州フォートワースに生まれたオーネット・コールマンは、地元でアルトサックスを学びながら音楽の才能を開花させました。貧しい家庭環境で育ちながらも、彼は幼少期からブルースやR&Bを吸収し、それらを自身のスタイルに取り入れました。特に彼のサックスの音色は、鋭く感情的でありながらも洗練されており、リスナーの心を掴む個性を持っています。
革命児の出現
1950年代後半、ロサンゼルスに移住したオーネットは、ジャズの先端を行くミュージシャンたちとの交流を通じて、独自の音楽スタイルを発展させていきます。そして1958年、彼の初のリーダーアルバム『サムシング・エルス!!!』が発表されました。この作品を通じて、オーネットは伝統的なジャズのルールを大胆に破り、リスナーに新しい音楽体験を提示しました。
アルバム『サムシング・エルス!!!』:曲目ごとの解説
1. インヴィジブル (Invisible)
アルバムの幕開けを飾るこの曲は、オーネットの独自性が全面に表れています。複雑なメロディラインと大胆なリズムセクションのアプローチが印象的です。
2. ザ・ブレッシング (The Blessing)
タイトルの通り、祈りのような静かな美しさを感じさせるナンバーです。コールマンのサックスとドン・チェリーのコルネットの掛け合いが素晴らしい。
3. ジェイン (Jayne)
オーネットの母親へのオマージュとも言われるこの曲は、個人的な感情が滲み出た感動的な一曲です。
4. チッピー (Chippie)
スウィング感が強調されたこの楽曲は、従来のジャズへの敬意を示しつつも、彼の個性が光る作品です。
5. ザ・ディスガイズ (The Disguise)
即興性と調和が見事に融合したこの曲は、アルバムのハイライトの一つです。
6. エンジェル・ヴォイス (Angel Voice)
しっとりとしたメロディラインが心地よく響くナンバーで、心を落ち着かせてくれる一曲。
7. アルファ (Alpha)
未来を予感させるような実験的なアプローチが随所に見られる楽曲です。
8. ホエン・ウィル・ザ・ブルース・リーヴ? (When Will The Blues Leave?)
ブルースの伝統を取り入れつつも、自由な解釈がユニークな仕上がりを見せています。
9. ザ・スフィンクス (The Sphinx)
アルバムの締めくくりを飾るこの曲は、力強く、聞き手に鮮烈な印象を残します。
アルバム制作に関わったミュージシャンたち
オーネット・コールマン (アルトサックス)
彼の革新的な演奏スタイルが、全体を通じてアルバムの核を成しています。
ドン・チェリー (コルネット)
コールマンの右腕とも言える存在で、緻密な即興演奏が特徴です。
ウォルター・ノリス (ピアノ)
伝統的なピアノの役割を担いつつも、コールマンの挑戦的なアプローチを見事にサポートしています。
ドン・ペイン (ダブルベース)
楽曲に深みを与える重厚なベースラインを提供しました。
ビリー・ヒギンス (ドラムス)
ダイナミックで柔軟なドラミングが、このアルバムの即興性をさらに引き立てています。
コンテンポラリー・レコーズと『サムシング・エルス!!!』
本作は、1951年設立の名門ジャズレーベル「コンテンポラリー・レコーズ」からリリースされました。このレーベルは、西海岸ジャズを中心としたリラックスしたサウンドで知られ、伝説のエンジニアであるロイ・デュナンやバーニー・グランドマンといった巨匠たちによる高音質な録音技術でも評価されています。本アルバムも、ロイ・デュナンによる録音技術が駆使され、2022年には最新リマスター版がリリースされるなど、長く愛され続けています。
まとめ:『サムシング・エルス!!!』の重要性とオーネット・コールマンの遺産
『サムシング・エルス!!!』は、ジャズ史における革命の象徴とも言える作品です。その革新性、アーティストたちの熱量、そして録音技術のクオリティは、リスナーに深い感動を与え続けています。オーネット・コールマンの音楽は時代を超えて新鮮であり、ジャズファンはもちろん、初めてジャズに触れる人にもぜひ聴いてほしい一枚です。
音楽を通じて自由を体現したオーネット・コールマンのスピリットに触れ、時代を超えた感動を味わいましょう。
下記URLはYouTubeにInvisibleが上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=1d2oqnpIw-8&list=PL4ypuAMic-GjHjC8zLE7V20p-Q1cva_hk
これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・