Oscar Pettiford Orchestra in Hi-Fi:オスカー・ペティフォードの名作、名盤を徹底解説
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
オスカー・ペティフォードとジャズの時代背景
1950年代、ジャズはビバップからモダンジャズへと進化し、多くの革新的なアーティストが新しい音楽の方向性を探求していました。その中で、オスカー・ペティフォードは、モダン・ジャズにおけるベースの重要性を確立した伝説的なベーシストとして大きな影響力を持ちます。
ペティフォードは、デューク・エリントン楽団での経験を活かし、1950年代後半に自身のオーケストラを結成。フレンチホルンやハープといった独特の楽器編成を用いたことで、彼の音楽は他のビッグバンドとは一線を画し、よりモダンで洗練されたサウンドを展開しました。
オスカー・ペティフォードのプロフィール
オスカー・ペティフォード(Oscar Pettiford, 1922年-1960年)は、アメリカ出身のベーシストであり、チェリストでもありました。彼はモダン・ジャズにおけるベース奏法の革新者として知られ、同時にビッグバンドのリーダーとしても高い評価を得ています。
デューク・エリントン楽団での活動を経て、自身のオーケストラを立ち上げ、1950年代後半には数々の名作を残しました。彼の演奏スタイルは、リズムの明確さとメロディアスなベースラインが特徴で、特にバンド内でのアンサンブルにおける役割の重要性を再定義しました。
アルバム『Oscar Pettiford Orchestra in Hi-Fi』の概要
『Oscar Pettiford Orchestra in Hi-Fi』は、オスカー・ペティフォードが1956年と1957年に録音した2つのセッションをまとめたアルバムです。ここでは、ペティフォードがフレンチホルンやハープといったユニークな楽器を取り入れ、ジャズオーケストラの可能性を広げています。
また、参加メンバーには、アート・ファーマー、トミー・フラナガン、ジジ・グライスといった当時の一流プレイヤーが揃い、彼らのスリリングなソロがアルバムを一層引き立てています。
収録曲紹介
1. Nica’s Tempo
アルバムの冒頭を飾る「Nica’s Tempo」は、ジャズ・バロン・エッセンスを感じさせる壮大なテーマで、フレンチホルンやハープの音色がジャズに新しい風を吹き込んでいます。ペティフォードのベースラインは曲全体を力強く支え、アンサンブルの中でバランスを保ちながらも独自の存在感を放っています。
2. Deep Passion
「Deep Passion」は、タイトルの通り深い感情を湛えたバラードです。ゆったりとしたテンポの中で、トミー・フラナガンのピアノとペティフォードのベースが繊細な対話を繰り広げ、楽器間のハーモニーが美しく重なり合います。
3. Smoke Signal
リズムが軽快な「Smoke Signal」は、スウィング感が強く、ペティフォードのリーダーシップが存分に発揮されています。ホーンセクションのスリリングなソロも聴きどころの一つです。
4. Sunrise – Sunset
「Sunrise – Sunset」では、ゆったりとしたメロディが朝と夜の移り変わりを描写し、エレガントなサウンドスケープが広がります。ペティフォードのチェロも印象的で、クラシカルな要素が加わった美しい楽曲です。
5. Not So Sleepy
「Not So Sleepy」は、テンポの速いビバップスタイルの楽曲で、リズムセクションのドライブ感が非常に心地よい一曲。ジジ・グライスのアレンジが効果的に働き、ペティフォードのオーケストラの技術的な高さを感じさせます。
6. Perdido
デューク・エリントンのレパートリーとしても知られる「Perdido」は、このアルバムの中でも特にエネルギッシュな演奏が楽しめる曲です。ホーンセクションの掛け合いが印象的で、オーケストラ全体の一体感が見事に表現されています。
7. Speculation
「Speculation」は、テンポの変化や複雑なハーモニーが特徴的で、ジャズの自由な即興演奏が楽しめる楽曲です。ペティフォードのベースが中心となり、メンバー全員のソロが次々と展開されていきます。
8. Two French Fries
ユニークなタイトルを持つ「Two French Fries」は、遊び心あふれるアレンジが光る軽快なナンバー。ペティフォードのユーモアが感じられ、他の楽曲とは一線を画すリズミカルな演奏が印象的です。
9. The Pendulum at Falcon’s Lair
「The Pendulum at Falcon’s Lair」は、アルバムの中でも異彩を放つミステリアスな雰囲気の楽曲です。フレンチホルンやハープの使用により、クラシカルな要素が強調され、緊張感のあるサウンドが特徴です。
10. The Gentle Art of Love
「The Gentle Art of Love」は、優雅なメロディラインが印象的なバラードで、アート・ファーマーのトランペットが情感豊かに響きます。
11. I Remember Clifford
「I Remember Clifford」は、クリフォード・ブラウンへの追悼曲であり、深い哀愁を帯びたメロディが胸に響きます。ペティフォードのベースが静かに支え、哀愁漂う演奏が魅力です。
その他の収録曲
「Aw! Come On」や「Little Niles」、「Seabreeze」といった楽曲でも、ペティフォードの独自のアプローチとオーケストラの力強いアンサンブルが光り、アルバム全体を通してバランスの取れた構成となっています。
オスカー・ペティフォードとそのオーケストラの魅力
このアルバムでは、オスカー・ペティフォードの革新性が存分に発揮されています。フレンチホルンやハープといったユニークな編成は、通常のビッグバンドでは聞かれない新しい音色を生み出し、彼のジャズに対する独自のアプローチが反映されています。ペティフォードは、演奏家としてだけでなく、編曲家としても卓越しており、各メンバーの才能を最大限に引き出すことで、スリリングかつエレガントなサウンドを作り上げました。
まとめ
『Oscar Pettiford Orchestra in Hi-Fi』は、モダン・ジャズの中でも異彩を放つ作品であり、オスカー・ペティフォードの音楽的探求が詰まった名盤です。
彼のオーケストラは、複雑なアンサンブルと個々のプレイヤーのソロパフォーマンスが絶妙に調和し、豊かな表現力を持っています。
このアルバムは、オスカー・ペティフォードの革新性とその時代におけるジャズの可能性を感じさせる重要な一枚として、今なお多くのジャズファンに愛されています。
下記URLはYouTubeにOscar Pettiford Orchestra In Hi Fi (1957) (Full Album)が上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=HEiCFXbC6Ok&t=96s
これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・