ハンク・モブレー『ソウル・ステーション』:温もりと静寂が共鳴する究極の癒しジャズ・アルバム
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
ジャズという癒し:趣味を通して感じる音の温もり
忙しい日々の中で、ふとした瞬間に流れるジャズの音色が心を癒してくれることがあります。音楽が趣味である方にとって、それは単なる娯楽ではなく、「生きるリズムを整えてくれるパートナー」のような存在かもしれません。今回ご紹介するのは、そんな「癒し」を体現するような作品、ハンク・モブレー『ソウル・ステーション』です。
ジャズを聴き始めたばかりの方にも、長年のファンにも、深く染み入るこの一枚。その魅力を、時代背景や演奏者のキャリアと共にご紹介していきます。
ジャズの時代背景:1960年、ブルーノートとハードバップの成熟期
1960年という年は、モダン・ジャズが最も輝きを放った時代。クールジャズやハードバップ、そしてフリージャズへの胎動も感じられた、変化と創造の入り混じる過渡期でした。
ブルーノート・レーベルは、そんな時代の中で「ジャズの基本」を大切にしながらも革新を続ける存在でした。録音エンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーの手によって、多くの名盤が高音質で記録され、世界中のジャズファンを魅了していきました。
その中心にいたのが、テナーサックス奏者ハンク・モブレー。彼の『ソウル・ステーション』は、まさにその集大成と呼ぶにふさわしい傑作です。
アーティスト紹介:ハンク・モブレーの魅力とは?
ハンク・モブレー(1930-1986)は、ブルーノート・レーベルにおいて1950年代から1970年代にかけて最も多くの録音を残したテナーサックス奏者です。
彼のサウンドは力強さよりもしなやかさ、情熱よりも温かさを感じさせる独自の魅力があります。多くのプレイヤーが技巧や派手な即興で競い合う中、モブレーは決して急がず、音の一つひとつに「人間味」と「深み」を込めるスタイルを貫きました。
マイルス・デイヴィスのバンドに参加していた時期もあり、同時代のスターたちに比べると控えめな存在ではありますが、「テナーマンの中のテナーマン」と呼ばれるように、ジャズを深く愛する人々からの評価は非常に高いのです。
『ソウル・ステーション』:収録曲と構成
アルバム『Soul Station』は、1960年2月7日、ニュージャージーの名スタジオ「ヴァン・ゲルダー・スタジオ」にて録音されました。
収録曲リスト:
Remember(スタンダード)
This I Dig of You(モブレー作曲)
Dig Dis(モブレー作曲)
Split Feelin’s(モブレー作曲)
Soul Station(モブレー作曲)
If I Should Lose You(スタンダード)
特筆すべきは、6曲中4曲がモブレー自身のオリジナルという点です。特にタイトル曲「Soul Station」は、彼の音楽性が結晶化した代表的ナンバー。軽やかで温もりがあり、まるで心に語りかけてくるようなメロディラインが印象的です。
セッション・メンバー:黄金のリズム・セクション
このアルバムを唯一無二の名盤たらしめているのは、超一流のリズム・セクションの存在です。
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Wynton Kelly(ピアノ)
マイルス・デイヴィス・バンドのレギュラーとして知られ、軽快かつ流麗なスイング感で、モブレーのテナーを優しく包みます。 -
Paul Chambers(ベース)
ケリーと同様にマイルス・バンドの常連。地を這うような低音が、全体のグルーヴを支えています。 -
Art Blakey(ドラム)
ジャズ・メッセンジャーズのリーダー。モブレーとは旧知の仲で、爆発力のあるプレイで場面を一気に盛り上げます。
この3人が一堂に会し、モブレーと築き上げたこの録音は、まさに奇跡的な一体感に満ちています。
曲ごとの魅力解説
Remember
柔らかく優しい旋律で始まる名演。モブレーの音色が温かく、日常の疲れをふっと癒してくれます。
This I Dig of You
スイング感溢れるモダンな曲調。ウィントン・ケリーのピアノも心地よく、聴いていて思わず身体が揺れるリズム。
Dig Dis
ブルース的なコード感が特徴の一曲。アート・ブレイキーのドラムソロが冴え、モブレーのソロも伸びやかで自由です。
Split Feelin’s
タイトル通りの「分裂した感情」を表すかのように、複雑なコード進行と流れるようなメロディが絡み合います。
Soul Station
アルバムのハイライト。モブレーの持つリリカルなセンスが最も発揮されており、静けさとソウルフルな感情が見事に融合。
If I Should Lose You
スタンダードナンバーながら、モブレーの解釈によって独自の哀愁を纏います。ラストに相応しい余韻を残す一曲。
癒しの音楽としての『ソウル・ステーション』
このアルバムは、ハードバップに分類されながらも、「前衛」ではなく「包容力」に重きを置いた作品です。決して攻撃的ではなく、さりげなく、しかし確実に心の奥に入り込んでくるような音色。それは、日常に寄り添ってくれるような「音の優しさ」に他なりません。
まるで、落ち込んでいる時に黙ってそっと隣にいてくれる友人のよう。そんな風に感じさせてくれるのが、モブレーの『ソウル・ステーション』なのです。
まとめ:趣味としてのジャズに、この一枚を
ジャズというジャンルに「難しさ」や「高尚さ」を感じて距離を取っていた方にこそ、ぜひ聴いていただきたいアルバムです。音楽に癒しを求めるすべての人に向けた、永遠のスタンダード。
ハンク・モブレーの穏やかなテナーと、最高の共演者たちが織りなす『ソウル・ステーション』は、時代を超えて愛される理由が確かに存在します。
のんびりしたい週末、コーヒー片手にぜひ一度、この音の温もりに触れてみてください。
🎧 おすすめの聴き方
夜の読書時間、早朝の静かな時間、雨の日の午後などに最適です。
下記URLはYouTubeにRemember (1999/ Remastered)が上がっていましたので貼らせて頂きました。
🔗https://www.youtube.com/watch?v=sbmKLZ_opuQ&list=PLGSxK-_xeRIaaa2pVu1eBD3GGmRmTASsq
これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・
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現在、年代順のアルバム紹介となっているため、下記の別ブログではJazz 名盤 紹介の部屋でカテゴリー別でのアルバムをご紹介しています。是非ご覧ください。
🔗Jazz 名盤 紹介の部屋 – 松藏七代 生活お役立ち部屋&趣味の部屋
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今後もジャズやクラシック、アートなど「心に触れる趣味」を特集していきます。