若き天才ブッカー・リトルが遺した唯一無二のソロ作品|アルバム《Booker Little》を徹底解説
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
ブッカー・リトルという孤高の才能が輝いた、奇跡のような一枚
1960年、時代はモダンジャズがハードバップから新たなフェーズへと移り変わろうとしていた。
その中で、23歳という若さで夭折したトランペット奏者ブッカー・リトルが、ただ一度だけ「ワン・ホーン」で録音した貴重なリーダー作がこのアルバム、《Booker Little》。
この作品には、彼の“音楽家としての思想”、“革新への意志”、そして“短くも美しく燃えた人生の光”がすべて詰まっている。
時代背景:モダンジャズから新たな地平へ、1960年前後のジャズシーン
1950年代後半から1960年代初頭にかけて、ジャズは大きなうねりを見せていた。
マイルス・デイヴィスによるモード・ジャズの開拓、オーネット・コールマンのフリージャズ旋風、ブルーノートを中心としたハードバップ黄金時代…。
そんな中で登場したのが、ブッカー・リトル。
彼は、クリフォード・ブラウン亡き後の“トランペットの新たな旗手”として多くのファンやミュージシャンから注目されていた。
特に彼のトランペットは、テクニック以上に“語る”音。情熱と知性、哀愁と希望が混ざり合うような音色は、まさに孤高の響きだった。
アーティスト紹介:ブッカー・リトルの人生とジャズへの貢献
ブッカー・リトルは1938年、テネシー州メンフィスに生まれた。
クラシック音楽を学びながらも、10代でジャズに目覚め、イリノイ大学からジュリアード音楽院へ進学。在学中にマックス・ローチと出会い、プロのキャリアをスタートさせる。
1958年にはマックス・ローチ・クインテットに加入し、その後もエリック・ドルフィーやジョン・コルトレーンといった革新的なプレイヤーたちと共演を重ねる。
しかし、1961年に慢性腎不全(尿毒症)で夭折。
録音はわずかに残るのみで、その中で唯一“ワン・ホーン”で吹き込んだリーダー作が、この《Booker Little》なのだ。
アルバム情報:《Booker Little》(Time Records/1960年録音)
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発売年:1960年
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レーベル:Time Records
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編成:ワン・ホーン・カルテット
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パーソネル:
ブッカー・リトル(tp)
ウィントン・ケリー(piano, 2曲)/トミー・フラナガン(piano, 4曲)
スコット・ラファロ(bass)
ロイ・ヘインズ(drums) -
収録曲:
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Opening Statement
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Minor Sweet
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Bee Tee’s Minor Plea
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Life’s a Little Blue
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The Grand Valse
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Who Can I Turn To?
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収録曲レビューと聴きどころ
Opening Statement
アルバムの幕開けにふさわしい、リトルの自己紹介とも言える1曲。
複雑なコード進行に乗って、彼のリリカルで鋭いフレーズが空間を切り裂くように響く。リズム隊も静かにサポートしつつ、リトルの自由な歌心を支える。
Minor Sweet
モーダルな雰囲気とハードバップの中間を行くような、不思議な質感の1曲。
トミー・フラナガンの軽やかなタッチが際立ち、ラファロの繊細なベースと絡み合うように展開される。
Bee Tee’s Minor Plea
どこか祈りにも似た雰囲気を湛えたマイナー調の楽曲。
ここでもリトルの感情表現の深さが光る。まるで言葉の代わりにトランペットで語りかけてくるような、哀しみと美しさが融合した一曲。
Life’s a Little Blue
タイトルのとおり、ブルーな感情が静かに広がるバラード。
スコット・ラファロのメロディアスなベースラインが、より一層の深みを与えている。ドラマティックな展開が聴きどころ。
The Grand Valse
異色ともいえる三拍子のワルツ曲。軽やかながらも実験的で、彼のクラシック的素養が垣間見える。
トランペットがまるで舞うようにメロディを奏でる。
Who Can I Turn To?
唯一のスタンダード曲で、しっとりとしたメロウなバラード。
ここに来て、リトルの叙情的な側面が最大限に引き出される。ウィントン・ケリーのサポートも非常に温かく、静かな余韻を残してアルバムは幕を閉じる。
なぜこのアルバムが“究極の1枚”と呼ばれるのか?
このアルバムが多くのジャズファンから「究極の1枚」と呼ばれる理由は、単に演奏の素晴らしさだけではない。
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ワン・ホーンという孤高の編成
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短命だったがゆえの、唯一無二の記録
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マイルスやモーガンとは異なる、“語りかける音色”
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バックを固める当時最強のメンバー陣
これらがひとつとなって、まさに**一音一音がリトルの“人生の語り”**となって私たちの耳に届く。
今なお、ブッカー・リトルの音が新しく、そして切なく感じられるのは、彼の音楽が心そのものだからだ。
まとめ:現代にこそ聴いてほしいブッカー・リトルの声
SNS時代、情報の洪水の中で“静かにじっくりと音楽を聴く時間”が減りつつある今だからこそ、
この《Booker Little》というアルバムは、心をリセットさせてくれる癒しの時間を与えてくれる。
春の夕暮れに、あるいは雨の夜に。
ブッカー・リトルのトランペットが、そっとあなたの心に寄り添ってくれるはずだ。
下記URLはYouTubeにBooker Little – 1960 – Booker Little – 01 Opening Statementが上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=UlXoeN-AZNc&list=PLUJ7V33M1wR2CqFDeXegDxnuM6gvKLLMN
これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・
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