『モーニン』徹底解説：アート・ブレイキーが切り拓いたファンキー・ジャズの金字塔

最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。

ジャズ黄金期の1958年：モダンジャズの新たな波

1950年代後半は、ビバップからハードバップへと進化するモダンジャズが円熟期を迎えた時代です。この頃、アート・ブレイキーをはじめとするジャズ・ミュージシャンたちは、ブルースやゴスペルなどアメリカの大衆音楽から影響を受けた感情豊かなスタイルを作り上げました。

その中で、1958年に録音された『モーニン（Moanin’）』は、ジャズ黄金期を象徴する名盤です。このアルバムは、ハードバップにファンキーな要素を取り入れた斬新なスタイルで、世界中にファンキー・ジャズ・ブームを巻き起こしました。

アルバムのタイトル曲「モーニン」は、ジャズ史上に残る名曲として広く知られており、日本でも高度経済成長期の活気を象徴する一曲として愛されています。

リーダーを務めるアート・ブレイキーは、パワフルで躍動感あふれるドラミングで知られ、ジャズ史における最重要ドラマーの一人です。ブレイキーのリーダーバンド「ジャズ・メッセンジャーズ」は、若手ミュージシャンを輩出するジャズの「学校」としても知られ、多くのスターを育てました。

19歳で本作に参加したリー・モーガンは、卓越したテクニックと鮮烈な音色で注目を集めました。「モーニン」でのソロプレイは彼の才能を余すところなく伝えています。

名作曲家としても知られるベニー・ゴルソンは、本作で「アー・ユー・リアル」や「アロング・ケイム・ベティ」といった楽曲を提供し、アルバムの完成度を大きく引き上げています。

「モーニン」の作曲者でもあるボビー・ティモンズは、ブルージーでファンキーなピアノスタイルが特徴的です。このアルバムを通じて、ファンキー・ジャズの方向性を確立しました。

リズムセクションを支えるジミー・メリットは、堅実で安定感のあるベースラインを提供し、アンサンブルを引き締めています。

『モーニン』は全6曲（ボーナストラックを含めると8曲）で構成され、ハードバップとファンキー・ジャズが融合した独自のサウンドが特徴です。

モーニン（Moanin’）
アルバムのタイトル曲であり、最大のヒットナンバーです。コール＆レスポンスのブルージーなメロディは、一度聴いたら耳に残る名旋律。冒頭のピアノフレーズから他の楽器が応える構成が見事で、ジャズ初心者にもおすすめの一曲です。

アー・ユー・リアル（Are You Real）
ベニー・ゴルソン作曲の楽曲で、シンプルながらエネルギッシュな展開が魅力。アンサンブルの完成度が高く、各メンバーのソロが聴きどころです。

アロング・ケイム・ベティ（Along Came Betty）
ベニー・ゴルソンの代表作の一つ。陰影のあるメロディと都会的な洗練さを持つ楽曲で、リラックスして楽しめます。

ドラム・サンダー組曲（The Drum Thunder Suite）
アート・ブレイキーのドラミングが主役となるスリリングな楽曲。曲全体を通じて、力強さと躍動感が印象的です。

ブルース・マーチ（Blues March）
行進曲をイメージした楽曲で、ベニー・ゴルソンの作曲力が光ります。コンサートではオーディエンスを熱狂させた一曲として知られています。

カム・レイン・オア・カム・シャイン（Come Rain Or Come Shine）
ジャズのスタンダードナンバーをアート・ブレイキー流に解釈した楽曲で、アルバムの締めくくりにふさわしい仕上がりです。

モーニン（別テイク）
タイトル曲の別テイクで、演奏の違いを楽しむことができます。

ブルース・マーチ（別テイク）
別テイクならではの即興性が魅力のトラックです。

『モーニン』は、ハードバップの枠を超え、ファンキー・ジャズという新しいジャンルを切り開いたアルバムです。ブルーノート・レーベル特有の高音質な録音が、各楽器の個性を引き立て、ライブ感あふれる演奏が存分に楽しめます。

特に「モーニン」は、後のジャズシーンに多大な影響を与えた名曲として、多くのミュージシャンにカバーされています。

『モーニン』は、ジャズ初心者にとっても最適なエントリーポイントであり、愛好家には再発見の楽しみを提供する永遠の名盤です。アート・ブレイキー＆ザ・ジャズ・メッセンジャーズによる躍動感あふれる演奏と、美しい楽曲の数々が詰まったこのアルバムは、ジャズファンなら必ず一度は聴くべき作品です。

このアルバムを通じて、ジャズ黄金期の息吹をぜひ感じてみてください。

下記URLはYouTubeにArt Blakey & the Jazz Messengers – Moanin’が上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=Cv9NSR-2DwM

これから、徐々にステレオ録音（1958年前後～）、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・