「モダン・アート」—アート・ファーマーとベニー・ゴルソンが描く1958年のジャズ名盤
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
1958年のジャズ黄金時代:背景と流れ
1950年代後半のジャズ界は、ビバップからハードバップへの進化が成熟期を迎えていた時代です。モダンジャズの新しいスタイルが次々と生まれる中で、アーティストたちは即興性を重視しつつも、洗練されたハーモニーや構成を追求していました。
この時代はマイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』やジョン・コルトレーンの『ブルー・トレイン』など、後世に名盤として残るアルバムが次々とリリースされた時期でもあります。
そんな中、アート・ファーマーとベニー・ゴルソンが中心となり作り上げた『モダン・アート』は、1958年に録音され、トランペットとテナーサックスの二管アンサンブルが織りなす独特の響きとハーモニーで聴く者を魅了する作品として完成しました。
アーティスト紹介:アート・ファーマーと共演者たち
アート・ファーマー(Art Farmer)
アート・ファーマーは1928年に生まれ、トランペットとフリューゲルホルンを中心に活動したジャズ界を代表するミュージシャンです。まろやかで滑らかな音色が特徴で、その演奏は「歌うようなトランペット」と評されるほど高い表現力を持っています。
『モダン・アート』録音時点では、名声が確立し始めた時期で、後にベニー・ゴルソンと結成した「ジャズテット」での活動により、さらに評価を高めました。
ベニー・ゴルソン(Benny Golson)
テナーサックス奏者であり作曲家・編曲家としても知られるベニー・ゴルソンは、モダンジャズにおいて重要な存在です。『フェア・ウェザー』や『アイ・リメンバー・クリフォード』など、美しい旋律を持つ楽曲を多く残しています。本作でも「フェア・ウェザー」という代表作を提供しています。
ビル・エヴァンス(Bill Evans)
本作のピアニスト、ビル・エヴァンスは言わずと知れたジャズ界の巨匠です。繊細なタッチと深いハーモニー感覚が特徴で、後のマイルス・デイヴィス『カインド・オブ・ブルー』でも中心的な役割を果たしました。
その他の共演者
アディソン・ファーマー(ベース)はアート・ファーマーの双子の兄弟で、緻密で安定したベースラインを提供します。また、ドラマーのデイヴ・ベイリーはリズムセクションを的確に支え、全体のアンサンブルを引き締めています。
『モダン・アート』:アルバム内容と聴きどころ
『モダン・アート』は1958年9月10日、11日、14日の3日間にわたって録音されました。ビバップの持つ活気に加え、ハーモニーの美しさやアンサンブルの精緻さが光る作品で、全8曲が収録されています。
収録曲のハイライト
Mox Nix
オープニングを飾る軽快な一曲。アップテンポで進行する旋律が楽しい雰囲気を醸し出していますが、単なる明るさに留まらない奥深さが特徴です。
Fair Weather
ベニー・ゴルソン作曲の美しいバラード。穏やかな旋律がトランペットとサックスの掛け合いで展開され、リスナーを静かな感動で包みます。特にアート・ファーマーの柔らかいトランペットの音色が際立つ名演です。
Darn That Dream
スタンダードナンバーを取り上げ、心地よいスイング感を持ったアレンジが光ります。
I Love You
コール・ポーター作曲のスタンダードで、アンサンブルの見事さが感じられる一曲です。イントロなしで始まるダイナミックな構成が印象的で、ソロが次々と展開する中でもバランスの取れた演奏が楽しめます。
Cool Breeze
アルバムのラストを飾る爽快なナンバー。軽やかなアンサンブルの中に、各プレイヤーの技巧が詰まっています。
音楽的特徴と評価
『モダン・アート』は、トランペットとサックスの二管構成によるハーモニーの美しさが特に評価されています。また、メンバー全員の演奏が高度に調和している点も魅力の一つです。
一方で、収録曲の個性が強いため、聴き手によって好みが分かれるかもしれません。それでも、本作はアート・ファーマーの音楽的才能を存分に感じられる名盤として、長年愛されています。
まとめ:ジャズの美しさを再発見する一枚
『モダン・アート』は、ジャズ黄金時代の1958年に録音され、その後のジャズ界に大きな影響を与えた作品です。アート・ファーマーをはじめとする豪華なメンバーが生み出す音楽は、今もなお多くのファンに愛されています。洗練された演奏と美しいハーモニーを堪能できるこのアルバムは、初心者から上級者までジャズ好きならぜひ手に取っていただきたい一枚です。
下記URLはYouTubeにArt Farmer (Usa, 1958) – Modern Art (Full)が上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=aLgFTR1hWTc
これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・