『死刑台のエレベーター』—マイルス・デイヴィスが生んだ映画音楽とモード・ジャズの歴史的瞬間
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
JAZZの時代背景とアルバムの重要性
1950年代後半は、ジャズが新たな進化を遂げた時代でした。アメリカではビバップから派生したハードバップが全盛期を迎え、ジャズの自由度や表現の幅が広がりつつありました。その中でもマイルス・デイヴィスは、ジャズ界の最前線を走る革命児として、多くの名作を生み出していました。
1957年、彼は一時的にパリを訪れました。当時のヨーロッパはアメリカと異なり、黒人アーティストに対する偏見が少なく、ジャズ文化が深く受け入れられていました。
この環境で制作されたのが、映画『死刑台のエレベーター』のサウンドトラックです。このアルバムは、モード・ジャズの萌芽を感じさせる作品として、ジャズ史において特別な位置を占めています。
アーティスト紹介:マイルス・デイヴィス
マイルス・デイヴィス(Miles Davis, 1926–1991)は、20世紀を代表するジャズトランペッターであり、ジャズの進化を牽引した革新者です。彼はビバップ、クール・ジャズ、ハードバップ、モード・ジャズ、さらにはフュージョンに至るまで、数々の音楽スタイルを生み出し、進化させてきました。
1957年は、彼の音楽的転換期とも言えます。パリ滞在中に制作された『死刑台のエレベーター』のサウンドトラックは、映画音楽の枠を超え、即興演奏によるスリリングな音楽表現で、ジャズの新たな可能性を示しました。
アルバム『死刑台のエレベーター』の詳細解説
録音年: 1957年12月4日、5日
録音場所: パリ
参加メンバー:
マイルス・デイヴィス(トランペット)
バルネ・ウィラン(テナーサックス)
ルネ・ユルトルジェ(ピアノ)
ピエール・ミシュロ(ベース)
ケニー・クラーク(ドラムス)
映画と音楽の関係性
ルイ・マル監督による映画『死刑台のエレベーター』は、殺人を題材としたサスペンス映画で、不倫、裏切り、そして犯罪の代償がテーマになっています。マイルス・デイヴィスはラッシュ・フィルム(編集前の映像)を観ながら即興で演奏し、登場人物の感情や映画の緊張感を見事に音楽で表現しました。
即興演奏とその魅力
マイルスは事前に準備したいくつかのメロディ断片を基に、映画に合わせて即興で演奏を完成させました。この即興性こそが、このアルバムの大きな特徴です。映画の場面にリアルタイムで反応した音楽は、ジャズならではの緊張感とダイナミズムに満ちています。
トラックリストと聴きどころ
テーマ
カララの殺人
ドライヴウェイのスリル
エレベーターの中のジュリアン
シャンゼリゼを歩むフロランス
…(省略)
このアルバムには、オリジナルLPに未収録だった別テイクが追加収録されており、映画音楽として加工される前の、生の演奏を楽しむことができます。特に「シャンゼリゼを歩むフロランス」や「ジュリアンの脱出」では、音楽が登場人物の心理を見事に表現しており、映画のストーリーを音楽だけで追体験できます。
本アルバムがジャズ界に与えた影響
この作品は、単なる映画音楽ではなく、ジャズの表現力と即興性を再定義した歴史的な意義を持ちます。1959年のモード・ジャズの金字塔『Kind of Blue』に繋がる要素が垣間見える本作は、ジャズファンのみならず、映画ファンや音楽愛好者にとっても必聴の一枚です。
おすすめポイント
即興演奏が生む緊張感とスリル。
映画を知らなくても楽しめる独立した音楽作品。
ジャズ初心者にも聞きやすい、ムードのある音楽。
このアルバムは、ジャズと映画が融合した傑作であり、マイルス・デイヴィスの才能がいかんなく発揮されています。あなたの音楽ライブラリにぜひ加えてください。
下記URLはYouTubeにAscenseur pour l’échafaud / 死刑台のエレベータが上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=YlSGNvtvGVU&list=RDYlSGNvtvGVU&start_radio=1
これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・