マイルス・デイヴィス『ジャズ・アット・ザ・プラザ』：ジャズ黄金期の魅力と癒しを感じるライブ名盤
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
ジャズの黄金時代と『ジャズ・アット・ザ・プラザ』の位置づけ
1950年代後半、ジャズはモダンジャズの成熟期を迎え、即興性や個々の演奏技術が大いに注目されるようになりました。
個々のミュージシャンがその才能を爆発させていました。この時代の中心にいたのが、トランペットの巨匠マイルス・デイヴィスです。彼は斬新な音楽性とリーダーシップで、ジャズ界に数々の革新をもたらしました。
彼はこの時期、伝説的なアルバム『カインド・オブ・ブルー』を準備中で、そのメンバーはまさに黄金のセクステットでした。
そんな彼が率いたセクステットは、モダンジャズの歴史において最も完成度が高いと言われています。メンバーには、ジョン・コルトレーンやビル・エヴァンスといった伝説のミュージシャンが名を連ね、各自が後のジャズ史を彩る重要な存在となりました。
『ジャズ・アット・ザ・プラザ』は、1958年9月9日にニューヨークのプラザ・ホテルで行われた特別なライブを録音したものです。ニューヨークの高級ホテル「ザ・プラザ」で開催された一夜限りのライブは、まさにその時代のジャズを象徴する出来事でした。
このライブは、コロンビア・レコードがジャズ部門の成功を祝うために開催したものであり、観客は音楽業界の関係者や招待客という限られた特別な空間でした。
このライブ録音は、後に『ジャズ・アット・ザ・プラザ』としてリリースされ、ジャズファンにとって語り継がれる名盤となりました。
『ジャズ・アット・ザ・プラザ』収録背景
このライブ録音は、当初リリース目的で行われたものではありませんでした。録音自体は「記録用」として行われたため、機材も簡素で、ライブアルバムとしての完璧な音質を追求したものではありません。
しかし、1973年にこの音源がリリースされると、ジャズファンにとって大きな話題となり、瞬く間に名盤として認識されました。
ライブ当時のメンバー構成は、以下の通りです：
マイルス・デイヴィス（トランペット）
ジョン・コルトレーン（テナーサックス）
キャノンボール・アダレイ（アルトサックス）
ビル・エヴァンス（ピアノ）
ポール・チェンバース（ベース）
ジミー・コブ（ドラムス）
このセクステットは『カインド・オブ・ブルー』のレコーディング直前という時期の貴重な記録でもあり、メンバー間の化学反応が存分に発揮されています。
アルバム収録曲の詳細と聴きどころ
『ジャズ・アット・ザ・プラザ』には以下の4曲が収録されています。それぞれの楽曲に込められた魅力を紹介します。
If I Were A Bell（イフ・アイ・ワー・ア・ベル）
ミュージカル『ガイズ＆ドールズ』の楽曲をアレンジした作品。マイルスの軽快なトランペットがリードし、セクステットの息の合った演奏が心地よい。冒頭からリスナーを惹きつける魅力が詰まっています。
Oleo（オレオ）
ソニー・ロリンズ作曲のスタンダードナンバー。コルトレーンのテナーサックスがエネルギッシュに駆け抜け、リズムセクションとの対話も見どころ。スリリングな演奏は、ライブ録音ならではの緊張感を楽しめます。
My Funny Valentine（マイ・ファニー・バレンタイン）
本アルバムで最も有名な楽曲。ビル・エヴァンスのリリカルなピアノと、マイルスのトランペットが生み出す美しさは、唯一無二。愛と哀愁が漂う演奏で、聴く者の心を深く揺さぶります。
Straight, No Chaser（ストレイト,ノー・チェイサー）
セロニアス・モンク作曲の名曲。自由なインタープレイとソロが織りなす活気あふれる演奏が、セクステットの真髄を表しています。
伝説のセクステットメンバー紹介
『ジャズ・アット・ザ・プラザ』で共演した6人のミュージシャンは、いずれもジャズ界に名を刻む存在です。それぞれの個性を深掘りしてみましょう。
マイルス・デイヴィス（トランペット）
モダンジャズを革新したリーダー。常に時代の先を行く音楽を追求し、このライブでも力強さと繊細さが融合した演奏を聴かせます。
ジョン・コルトレーン（テナーサックス）
この時期のコルトレーンは、自身の音楽を模索していた時期でありながら、すでに類まれなサックスプレイを披露しています。
ビル・エヴァンス（ピアノ）
白人ピアニストとして、繊細で詩的な演奏を得意とするエヴァンス。マイルスとの共演で唯一の公式録音が本作です。
キャノンボール・アダレイ（アルトサックス）
ブルースフィーリングを基盤に、親しみやすい演奏が特徴。ライブでは生き生きとしたプレイを聴かせています。
ポール・チェンバース（ベース）
重厚なベースラインと豊かなメロディで、バンドを支えた存在です。彼のプレイはアルバム全体の屋台骨を築いています。
ジミー・コブ（ドラムス）
セクステットのリズムを的確に支える一方で、ライブならではのダイナミックなプレイを展開しています。
録音の特徴と1973年のリリースまでの流れ
このアルバムは、当初リリース目的ではなく記念録音として行われました。そのため音質には若干の粗さがあるものの、逆に臨場感が際立っています。
リリースまでの15年間、音源は眠り続けましたが、1973年に初めて日の目を見ることとなりました。当時のファンにとっては、50年代のマイルスが新たに届けられたことが大きな驚きだったのです。
ファンが愛し続ける理由：時代を超えた名盤の魅力
『ジャズ・アット・ザ・プラザ』の魅力は、録音の荒さを超えた演奏の素晴らしさにあります。当時のライブならではのスリリングな空気感や、セクステットの持つ化学反応は、ジャズファンにとって何度聴いても新鮮です。
また、1950年代というジャズ黄金期の熱気を感じられる作品としても、歴史的な価値を持っています。
アルバムの魅力を深掘り
『ジャズ・アット・ザ・プラザ』を聴くことで、当時のジャズシーンに生きた巨匠たちの生々しいパフォーマンスを体感できます。録音技術の制約を超えた彼らの表現力や、ライブならではのインタープレイの妙技は、聴き手に大きな感動を与えます。
また、ビル・エヴァンスとマイルス・デイヴィスの共演が公式録音で聴ける唯一の作品である点も、ファンにとって見逃せないポイントです。
録音の背景とその後の評価
このライブは、当初コロンビア・レコードの記念イベントとして録音されたものでしたが、商業リリースを前提としていませんでした。そのため、音響バランスに若干の難があるものの、それが逆にライブ特有の臨場感を引き立てています。
1973年に初めてアルバムとしてリリースされると、ジャズファンの間で瞬く間に話題となり、現在では「ライブ録音の名作」として位置づけられています。特に、『カインド・オブ・ブルー』直前のセクステットによる貴重な記録として、歴史的価値も高い作品です。
まとめ：癒しと感動を感じるジャズの名盤
『ジャズ・アット・ザ・プラザ』は、単なるライブ録音を超え、聴く人の心に深い癒しと感動を与えるアルバムです。ジャズの持つエネルギーや美しさ、そしてその奥に潜む人間味あふれるドラマが詰まったジャズ史に残る名盤です。
当時の巨匠たちの演奏に耳を傾ければ、ジャズがもたらす癒しと感動を存分に味わうことができるでしょう。
このアルバムを通して、1950年代のジャズシーンにタイムスリップし、その豊かな音楽性を堪能してみてください。
マイルス・デイヴィス・セクステットのライブ記録としてだけでなく、1950年代後半というジャズの黄金時代を象徴する作品として、ぜひ手に取ってみてください。
下記URLはYouTubeにThe Miles Davis Sextet Jazz At The Plaza 1958 (vinyl record)が上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=j22Y2zEnvlE&t=392s
これから、徐々にステレオ録音（1958年前後～）、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・
