ジョージ・ウォリントンの傑作『ジャズ・フォー・ザ・キャリッジ・トレード』を徹底解説|フィル・ウッズ、ドナルド・バードと共に紡ぐバップの頂点
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
アルバム紹介
1950年代、ジャズの世界はビバップという新しい音楽スタイルが支配していました。このスタイルは、より複雑で高度な演奏技術を要求するもので、ジャズミュージシャンたちのスキルと創造力が試される時代でした。
その中で、ビバップの申し子とも言えるピアニスト、ジョージ・ウォリントン(George Wallington)は、限られた数の録音しか残していないながらも、今もなおジャズファンから高く評価されています。その中でも特に注目されるのが、1956年1月に録音された名盤『ジャズ・フォー・ザ・キャリッジ・トレード(Jazz for the Carriage Trade)』です。
ジャズの時代背景
ビバップは1940年代にチャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーらが生み出したスタイルで、従来のスイングジャズよりも速いテンポ、複雑なコード進行、即興演奏を特徴としています。この流れを受けて、1950年代にはビバップがさらに洗練され、ミュージシャンたちはより高い技術と革新を追求しました。
ジョージ・ウォリントンは、このビバップシーンで活躍した白人ピアニストの一人であり、彼の演奏はリリカルかつ知的なアプローチで知られています。彼は、ニューヨークのジャズシーンで若手ミュージシャンたちと共に数々の名セッションを行い、その中でもこの『ジャズ・フォー・ザ・キャリッジ・トレード』は、ビバップの魅力を凝縮した一枚としてジャズ史に名を刻んでいます。
アーティスト紹介
ジョージ・ウォリントンは1924年イタリア生まれ。幼少期にアメリカに移住し、ニューヨークのジャズシーンで活動を始めました。彼はビバップの影響を強く受け、チャーリー・パーカーやマイルス・デイヴィスといったビバップの巨人たちとも共演しています。
ウォリントンのピアノスタイルは、テクニカルでありながらも情感豊かで、ビバップの複雑さを完全に消化し、自身の個性を反映させた演奏が特徴です。
また、このアルバムで共演しているミュージシャンたちも注目に値します。フィル・ウッズ(Phil Woods)はジャズ界屈指のアルト・サックス奏者であり、ドナルド・バード(Donald Byrd)は当時新進気鋭のトランペッターでした。
この二人の新鮮なエネルギーが、ウォリントンの洗練されたピアノと絶妙に調和し、アルバム全体に生き生きとしたバイブスを与えています。
アルバム内容紹介
『ジャズ・フォー・ザ・キャリッジ・トレード』には、全6曲が収録されています。それぞれの楽曲がビバップの多様な側面を捉えており、ウォリントンを中心とした演奏陣の高度な技術が光ります。
1. アワ・デライト (Our Delight)
この曲は、タッド・ダメロン作曲のビバップクラシック。冒頭からウォリントンの華麗なピアノが躍動し、フィル・ウッズのアルトサックスとドナルド・バードのトランペットがエネルギッシュに絡み合います。曲全体が高揚感に満ち、まさにビバップの醍醐味を味わえる一曲です。
2. アワ・ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ (Our Love Is Here to Stay)
ガーシュウィンの名曲をウォリントンが繊細かつ情感豊かにアレンジしています。ピアノの美しい響きが際立ち、ビバップにとどまらないウォリントンの幅広い音楽的視野が感じられます。
3. フォスター・ドゥールス (Foster Doodles)
ウォリントンのオリジナル曲で、楽しいメロディラインと複雑なリズムが特徴です。彼のピアノの技巧が存分に発揮され、他のミュージシャンたちもその勢いに応じるように高度なソロを披露しています。
4. トゥゲザー・ウィ・ウェイル (Together We Wail)
疾走感あふれるテンポで進行するこの曲は、ウォリントンとウッズ、バードが一体となって演奏する姿が目に浮かぶかのようです。即興演奏のスリルが堪能できる一曲です。
5. ホワッツ・ニュー (What’s New)
この曲では、ウォリントンのメロディアスで柔らかいタッチが際立ちます。バラードでありながらも、彼の即興演奏には静かな緊張感が漂い、聴く者の心を捉えます。
6. バット・ジョージ (But George)
アルバムの最後を飾るこのトラックは、軽快なリズムとキャッチーなメロディが特徴。ウォリントンのピアノが軽やかに跳ね、アルバム全体の余韻を心地よく締めくくります。
まとめ
『ジャズ・フォー・ザ・キャリッジ・トレード』は、ビバップという音楽スタイルの奥深さと、その中で磨き抜かれたジョージ・ウォリントンのピアノ技術が堪能できる一枚です。
フィル・ウッズやドナルド・バードといった若手ミュージシャンたちとの共演によって、アルバム全体が生き生きとした活気に満ちています。このアルバムは、ビバップファンのみならず、ジャズを深く知りたい人々にもおすすめできる名盤です。
下記URLはYouTubeにOur Delightが上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=OOzqCcLajw4&list=OLAK5uy_nSz1iNdcjiZOSMLpYGmBboVJG7zLJY4tY
これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・
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