ジェリー・マリガン・ミーツ・セロニアス・モンク+4|1957年録音の名盤が生む癒しと革新
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
ジャズの黄金時代と異色の共演
1950年代は、アメリカでジャズが多様なスタイルに発展を遂げた時期です。特にニューヨークとロサンゼルスはジャズの中心地として、それぞれの個性を象徴する「イースト・コースト・ジャズ」と「ウエスト・コースト・ジャズ」が生まれました。
1957年に録音された『マリガン・ミーツ・モンク+4』は、この二大スタイルが融合した、まさに”奇跡”とも言える作品です。
このアルバムには、ニューヨーク出身のピアニストであるセロニアス・モンクと、西海岸で人気を博したバリトンサックス奏者ジェリー・マリガンが共演しています。モンクは独自のリズムと和音のユニークさで知られ、「ビバップ時代の異端児」とも称されました。
一方、マリガンは落ち着いた演奏と洗練された音色で、特にウエスト・コースト・ジャズにおける中心人物として活動していました。
アルバム『マリガン・ミーツ・モンク+4』の魅力
トラックリスト
・ラウンド・ミッドナイト
・リズマニング
・スウィート・アンド・ラヴリー
・デサイデッドリー (テイク 4)
・ストレイト、ノー・チェイサー (テイク 3)
・アイ・ミーン・ユー (テイク 4)
・デサイデッドリー (テイク 5) [CDボーナス・トラック]
・ストレイト、ノー・チェイサー (テイク 1) [CDボーナス・トラック]
・アイ・ミーン・ユー (テイク 1) [CDボーナス・トラック]
・アイ・ミーン・ユー (テイク 2) [CDボーナス・トラック]
このアルバムの収録曲は、モンクの代表曲「ラウンド・ミッドナイト」をはじめ、彼ならではの複雑かつ大胆なメロディが中心です。その中でも、マリガンのバリトンサックスが独特の響きを放ち、モンクのトリッキーな楽曲に優雅に応じる様は必聴です。
名手たちのスムーズな化学反応
ピアニストであるモンクとサックス奏者のマリガンの共演は、一見すると異色の組み合わせに見えますが、アルバムを通じて感じられるのは、互いの演奏スタイルの絶妙な調和です。
モンクが奏でる少し歪んだ和音の世界観に、マリガンの洗練されたバリトンサックスが優しく重なることで、違和感がないどころか、新しい美しさが生まれています。
特に「スウィート・アンド・ラヴリー」では、モンクのメランコリックなバラードと、マリガンの柔らかくメロウなバリトンサウンドが溶け合い、聴く者に深い癒しと安心感を与えます。
この曲は、モンクらしいミステリアスな旋律と、マリガンの温かい音色の共鳴が際立つ、アルバム中でも特におすすめの一曲です。
バリトンサックスの表現力と独自のアプローチ
マリガンはチェット・ベイカーとのカルテットでもバリトンサックスを活かし、シンプルながらも深みのある表現を追求してきました。このアルバムでも、「リズマニング」などのアップテンポの楽曲においては、マリガンの軽やかで流麗な演奏が光ります。
しかしその一方で、速いテンポの中ではそのサウンドがリズムに溶け込みやすくなる傾向も見られます。これはマリガンの音楽性に起因する独特の現象で、アップテンポでも抑制の効いた表現力を持つ彼の強みが表れています。
まとめ|唯一無二の癒しと刺激を与える一枚
『マリガン・ミーツ・モンク+4』は、イースト・コーストとウエスト・コーストの両者が持つ個性が溶け合い、1957年という時代ならではの新しい化学反応を引き起こしたアルバムです。癖のあるモンクのピアノと、流麗なマリガンのサックスが生む対照的な調和が、聴く者に深い安らぎと共に刺激を与えてくれます。
ジャズファンにとっては必携の名盤であり、これからジャズを始めたいと考えている方にも、モンクの名曲とマリガンの優雅なバリトンサックスを楽しむ最適な作品です。
下記URLはYouTubeに’Round Midnight / Thelonious Monk and Gerry Mulliganが上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=qMlNVAwJDcE&list=PLJ51yXNWJSWxgr2byhYx-lYWecvHHCkxn
これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・