マイルス・デイビス『マイルストーンズ』が紡ぐジャズの黄金時代:全曲解説とアーティストの魅力
時代背景:ジャズが進化した1950年代後半
1950年代後半、ジャズは大きな転換期を迎えました。バップ(Bebop)の複雑なハーモニーから、より簡潔で感情的なアプローチを求める動きが生まれ、モード・ジャズ(Modal Jazz)が台頭しました。
この変革を象徴するのが、1958年に録音されたマイルス・デイビスの『マイルストーンズ』です。本作は、その後のジャズ史に決定的な影響を与えた「モード手法」の確立を示す重要な作品となりました。
アーティスト紹介:黄金期のメンバーが集結
『マイルストーンズ』は、マイルス・デイビスを中心に、ジャズ界の伝説的プレイヤーが集結した作品です。このアルバムに参加したメンバーは以下の通りです:
マイルス・デイビス(トランペット)
圧倒的なリーダーシップでジャズのスタイルを次々と革新。彼のクールな演奏スタイルがアルバム全体を貫いています。
キャノンボール・アダレイ(アルトサックス)
ブルースの深い影響を感じさせるソウルフルなプレイで、アルバムにエネルギーを与えています。
ジョン・コルトレーン(テナーサックス)
後にジャズの巨人となるコルトレーンが、ここでも自由な即興演奏を披露。
レッド・ガーランド(ピアノ)
スウィング感のあるバッキングが印象的。特に「ビリー・ボーイ」のピアノ演奏は圧巻です。
ポール・チェンバース(ベース)
深みのあるベースラインで全体を支える名手。
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラムス)
ダイナミックでスリリングなリズムを提供。アルバム全体のテンポ感を牽引します。
アルバム内容と魅力の徹底解説
『マイルストーンズ』は全9曲が収録されており、その中でも特に注目すべき楽曲とその魅力を以下に解説します。
1. ドクター・ジャックル
アップテンポなバップナンバー。メンバー全員の技術力が光る、力強いパフォーマンスです。
2. シッズ・アヘッド
ブルースの要素を感じさせる楽曲で、アドリブの妙技が楽しめます。キャノンボールとコルトレーンの掛け合いが秀逸。
3. トゥー・ベース・ヒット
スウィング感のあるナンバーで、ベースラインの巧みな展開が印象的。
4. マイルストーンズ
本作のタイトル曲であり、モード手法が試みられた記念碑的楽曲。非常に簡潔なコード進行の中で、各プレイヤーが自由な即興演奏を展開します。モード・ジャズの原点ともいえる一曲です。
5. ビリー・ボーイ
ピアニスト、レッド・ガーランドによるソロピアノ曲。軽快なアレンジで親しみやすいナンバーです。
6. ストレイト, ノー・チェイサー
セロニアス・モンクの名曲を大胆にアレンジした楽曲。スウィング感と即興演奏の緊張感が魅力。
7–9. ボーナストラック(別テイク)
アルバムには、3曲の別テイクがボーナストラックとして収録されています。これらのトラックでは、同じ楽曲でも異なるアプローチや即興演奏の違いを楽しむことができます。
特に、「マイルストーンズ」の別テイクは、モード・ジャズの可能性をさらに深掘りした試みが感じられ、聞き比べが楽しい内容となっています。
『マイルストーンズ』の魅力:なぜ名盤と呼ばれるのか
モード・ジャズのパイオニア作品
このアルバムは、コード進行に縛られず自由に展開するモード・ジャズの概念を初めて本格的に提示した作品です。特にタイトル曲「マイルストーンズ」はその象徴であり、後の『カインド・オブ・ブルー』へと続くマイルスの音楽的探求の出発点となりました。
メンバーの豪華さと化学反応
黄金期のメンバーが織りなすアンサンブルは、まさに奇跡的なバランス。全員が一流のプレイヤーでありながら、それぞれが独自の個性を発揮しています。
録音の質の高さ
1958年という録音環境を考えると、驚くべきクオリティを誇ります。リマスター版やSACD化によって、よりクリアなサウンドで楽しめるのも魅力のひとつです。
まとめ:癒しと刺激を与えるジャズの傑作
『マイルストーンズ』は、ジャズ初心者から玄人まで幅広い層に愛されるアルバムです。その理由は、自由で革新的なサウンドと、時代を超えた普遍的な美しさにあります。このアルバムを聴くことで、ジャズが持つ深い癒しと刺激を感じることができるでしょう。
癒しの時間を提供する趣味として、この名盤をぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか?
下記URLはYouTubeにMiles Davis – Milestones (Official Audio)が上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=k94zDsJ-JMU
これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・