サージ・チャロフの名作『ブルー・サージ』:ビブラートが織りなすジャズの至高の美
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
1956年、ジャズ史に刻まれる名盤『ブルー・サージ』がリリースされました。このアルバムは、バリトン・サックスの名手サージ・チャロフが、その晩年に録音した貴重な作品で、彼のリーダー作としては最後のアルバムとなります。
バックを支えるのは、ピアニストのソニー・クラーク、ベーシストのルロイ・ヴィネガー、そしてドラマーのフィリー・ジョー・ジョーンズというジャズの巨匠たち。このアルバムは、彼らの卓越したサポートとともに、チャロフの豊かな表現力が凝縮された作品です。
アルバムの時代背景とジャズの流れ
1950年代は、ビバップからハードバップに移行する時期で、ジャズの演奏スタイルも洗練され、個々のミュージシャンが独自の表現を追求していました。
この頃、バリトン・サックスはジャズの中で必ずしもメインストリームではありませんでしたが、サージ・チャロフはその枠を超え、この楽器に新たな価値を与えました。
バリトン・サックスの先駆者としてはジェリー・マリガンやハリー・カーネイなどが知られていますが、チャロフは独自の音楽性で多くのリスナーを魅了しました。
彼の演奏は、重厚で力強いバリトン・サックスをあくまで流麗に、メロディアスに響かせる点が特徴的です。その背景には、彼自身の短い人生の中で培った音楽的成熟が感じられます。
サージ・チャロフと『ブルー・サージ』の魅力
サージ・チャロフは1923年生まれ、1957年に34歳の若さで脊椎ガンにより亡くなりました。彼は1940年代後半にウッディ・ハーマン楽団で名声を築きましたが、1950年代に病気で活動を一時中断。しかし、晩年に再び音楽シーンに復帰し、1956年に『ブルー・サージ』を含む2枚のリーダー作を発表しました。
このアルバムは、サージ・チャロフの表現力が最高度に達した作品として評価されています。彼の演奏は、時に大胆で力強く、時に繊細で抒情的。特に、チャロフ特有のビブラートが美しく、低音から高音にかけて滑らかに吹き上げる技術は圧巻です。
アルバム収録曲のレビュー
アルバム『ブルー・サージ』には、全7曲が収録されています。
その中でも、特に印象的なのは次の楽曲です。
ア・ハンドフル・オブ・スターズ (A Handful of Stars)
ゆったりとしたテンポで進むこの曲は、チャロフのビブラートが存分に楽しめます。彼の繊細な表現が冴え渡り、夜の空に瞬く星のような美しさが感じられます。
ザ・グーフ・アンド・アイ (The Goof and I)
リズミカルで軽快な曲調の中で、チャロフの演奏は自由奔放。バリトン・サックスの重厚さを感じさせながらも、遊び心が溢れるアレンジが魅力です。
サンクス・フォー・ザ・メモリー (Thanks for the Memory)
このバラードは、感傷的なメロディが特徴。チャロフの柔らかな音色と、深い情感が見事に融合しています。特に、この曲のビブラートがリスナーの心を捉えることでしょう。
オール・ザ・シングス・ユー・アー (All the Things You Are)
ジャズのスタンダードナンバーであるこの曲は、チャロフの流麗なソロが光る一曲。彼のサックスは、メロディーを包み込むような温かみを持ち、ソニー・クラークのピアノとも絶妙に絡み合います。
スージーのブルース (Susie’s Blues)
ブルースのリズムをベースにしたこの曲では、チャロフの即興性が存分に発揮されています。彼の抑えた音色がじわじわと感情を高め、終盤には圧倒的なパフォーマンスが展開されます。
ソニー・クラークとフィリー・ジョー・ジョーンズのサポート
アルバム全体を通して、サージ・チャロフのリーダーシップは際立ちますが、共演者の存在も無視できません。ソニー・クラークのピアノは、軽やかでありながらも深みのあるサポートを提供し、フィリー・ジョー・ジョーンズのドラムスは、リズムの骨格をしっかりと支えています。
クラークの演奏は西海岸ジャズの軽やかさと、後にブルーノートレーベルで見せる重厚なプレイスタイルの中間に位置しており、この時期特有の味わいを持っています。
まとめ
『ブルー・サージ』は、ジャズファンにとって聴くべき一枚です。サージ・チャロフの流麗なバリトン・サックスは、ただ単に低音を響かせるだけでなく、そのメロディアスな演奏が心地よい癒しを与えます。特に夜にリラックスしながら聴くのに最適であり、ジャズの歴史における珠玉の作品といえます。
サージ・チャロフの音楽は、彼の短い人生とともに時を超えて人々に愛され続けています。彼の繊細な演奏は、今後も多くのリスナーに影響を与えることでしょう。
下記URLはYouTubeにSerge Chaloff. A Handful of Starsが上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=Z9AbLnvTEcM&list=PLk5SVLXcQrR40UGDJGOs0JK4IO6wByymR
これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・
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