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ケニー・ドーハム『静かなるケニー』:憂いと美しさが織りなすジャズの名盤を徹底解説

静かなるケニー 趣味を通して感じる癒し

ケニー・ドーハム『静かなるケニー』哀愁のトランペットが描くジャズの静謐な世界

最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。

ジャズの時代背景:『静かなるケニー』が誕生した1950年代後半

1950年代後半、ジャズはその進化の中で多様なスタイルを展開していました。モダンジャズが主流となり、ビバップからハードバップへと流れが変わる中で、アーティストたちは即興演奏と感情表現を融合させた新たな音楽を追求していました。

特に1959年は、ジャズ史における「奇跡の年」として知られています。この年にはマイルス・デイビスの『カインド・オブ・ブルー』やデイヴ・ブルーベックの『タイム・アウト』、ジョン・コルトレーンの『ジャイアント・ステップス』といった不朽の名作が次々と発表されました。

そんな中で、ケニー・ドーハムが発表した『静かなるケニー』は、華々しい革命的な作品というよりも、リスナーの心を静かに癒す、内省的で叙情的な名作として位置づけられます。このアルバムは、ハードバップの枠組みの中に、ドーハム独自の抒情性を織り込み、ジャズの多様な表現の一端を示す作品です。

ケニー・ドーハム:いぶし銀のトランペッター、その人生と音楽

ケニー・ドーハム(Kenny Dorham, 1924–1972)は、アメリカ・テキサス州生まれのトランペット奏者で、ビバップからハードバップの時代を代表するアーティストの一人です。

彼は1940年代にディジー・ガレスピーやチャーリー・パーカーといったビバップの開拓者たちと共演し、徐々に頭角を現しました。その後、アート・ブレイキー率いるジャズ・メッセンジャーズやホレス・シルヴァーのクインテットで活動し、数々の名演を残しました。

しかし、マイルス・デイビスやクリフォード・ブラウンといった同時代のトランペッターの影に隠れ、彼の名前が大きくクローズアップされることはありませんでした。

それでも、ドーハムはその繊細な音色と感情表現豊かなプレイで、多くのジャズファンの心をつかみました。彼のトランペットは、派手さよりも深みや叙情性に富んでおり、その個性が最もよく表れているのが本作『静かなるケニー』です。

『静かなるケニー』の魅力と収録曲解説

『静かなるケニー』は、1959年に録音され、ケニー・ドーハムのキャリアの中でも最高傑作とされています。このアルバムの特徴は、ドーハムの持つ「静かなる情熱」とも言うべき抒情性が余すところなく表現されている点です。

静かなるケニー

収録曲リストと解説

蓮の花(Lotus Blossom)
アルバムの幕開けを飾る代表曲。アジア風の異国情緒を漂わせるメロディが印象的で、ドーハムの情感豊かなトランペットが心に染み渡ります。ジャズファンから特に愛される一曲です。

マイ・アイディアル(My Ideal)
スタンダード曲を取り上げたロマンチックなバラード。ドーハムの温かく包み込むような演奏が特徴です。

ブルー・フライデイ(Blue Friday)
ハードバップのエッセンスを感じさせるアップテンポな曲。軽快なリズムと即興の掛け合いが楽しめます。

アローン・トゥゲザー(Alone Together)
ジャズスタンダードの名曲を叙情的に解釈した一曲。ドーハムの美しいトランペットソロが聴きどころです。

ブルー・スプリング・シャッフル(Blue Spring Shuffle)
明るく軽快な曲調で、アルバム全体にリズムの多様性を加えています。

アイ・ハド・ザ・クレイジェスト・ドリーム(I Had the Craziest Dream)
古き良きスタンダードを再構築し、ドーハムの哀愁漂う音色が際立ちます。

オールド・フォークス(Old Folks)
優しいメロディラインが印象的な楽曲で、ドーハムの抑制された表現が心地よい余韻を残します。

マック・ザ・ナイフ(Mack the Knife)
人気のジャズスタンダードを独自のアプローチで演奏したトラック。リズムセクションとの掛け合いが魅力的です。

『静かなるケニー』の音楽的な特徴

このアルバムの魅力は、派手さではなく「静けさ」の中にあります。ケニー・ドーハムの演奏は、過剰な技巧や大音量ではなく、丁寧な音作りと自然なフレージングで聴く者の心に訴えかけます。

特に印象的なのは、ドーハムのトランペットの音色です。しっとりとした温かみがあり、どの曲においても感情が豊かに込められています。バックを支えるリズムセクションのサポートも秀逸で、アルバム全体が一つの物語のようにまとまっています。

参加ミュージシャンには、以下のメンバーが名を連ねています:

ケニー・ドーハム(トランペット)

トミー・フラナガン(ピアノ):流れるようなタッチと繊細なコードワークが際立つピアニスト。

ポール・チェンバース(ベース):重厚な音色でアルバム全体を支える役割を果たします。

アート・テイラー(ドラム):シンプルながらも的確なリズムで楽曲を引き立てます。

『静かなるケニー』が与える癒しとその後の影響

『静かなるケニー』は、ジャズファンにとって心の拠り所のような作品です。その静謐な音楽は、日常の喧騒を忘れさせてくれるような癒しを提供します。また、ケニー・ドーハムの抒情的なアプローチは、多くのトランペット奏者やジャズミュージシャンに影響を与えました。

まとめ:『静かなるケニー』の不朽の魅力

ケニー・ドーハムの『静かなるケニー』は、ジャズの持つ多様な魅力の中でも、特に心を落ち着ける美しさに満ちた作品です。控えめながらも心に響く演奏は、ジャズ初心者から愛好家まで幅広い層に支持されています。

このアルバムを聴けば、ケニー・ドーハムの持つ「静けさの中の力強さ」を感じることができるはずです。夜のひとときやリラックスしたい時間に、ぜひこの名盤を楽しんでみてください。

下記URLはYouTubeにKenny Dorham – 1959 – Quiet Kenny – 01 Lotus Blossomが上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=RiYM80oy5Uc&list=PLUJ7V33M1wR0jRtIsS7o8She4es_bkMzb

これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・

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