ジャズ名盤『パル・ジョーイ』|ケニー・ドリューが奏でるミュージカルの名曲たち
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
ジャズの時代背景とケニー・ドリューの立ち位置
1950年代のジャズシーンは、多様なスタイルが共存し進化する時代でした。ビバップの台頭により複雑で高度な演奏技術が求められ、ジャズは単なる娯楽から芸術としての地位を確立しました。この中で、ピアニストのケニー・ドリューは、優雅で叙情的なタッチと高度なハーモニー感覚を持つ名手として注目を浴びました。
ケニー・ドリューはニューヨークを拠点に活躍していましたが、後にデンマーク・コペンハーゲンに移住し、欧州ジャズ界の重鎮としても評価を高めました。本作『パル・ジョーイ』は、彼がアメリカ時代に残したトリオ録音の一つで、彼の音楽家としての成長を感じさせる重要な作品です。
『パル・ジョーイ』とは?
本アルバムは、リチャード・ロジャースとロレンツ・ハートというソングライティングの黄金コンビが音楽を手掛けたミュージカル『パル・ジョーイ』をジャズ化したものです。ミュージカル『パル・ジョーイ』は1940年に初演され、その大胆なストーリーと魅力的な楽曲で当時のブロードウェイを席巻しました。
このアルバムでは、ケニー・ドリューがそのミュージカルの楽曲を素材にして、ジャズトリオとして新たな解釈を加え、洗練された演奏を披露しています。
アーティスト紹介:ケニー・ドリュー
ケニー・ドリュー(Kenny Drew)は1928年生まれのピアニストで、ジャズの歴史において高い評価を受けています。彼のスタイルは、ビバップの先鋭的な感性に加え、クラシカルな優美さと叙情性が融合していることが特徴です。
本作で共演しているメンバーにも注目してください。ドラマーのフィリー・ジョー・ジョーンズは、力強くも繊細なスティックさばきでトリオ全体を支えています。また、ベースラインの安定感とリズムの調和はアルバムの深みを一層際立たせています。
アルバム『パル・ジョーイ』の魅力と収録曲レビュー
アルバム全体の特徴として、ロジャース&ハートによる美しい旋律を大切にしつつ、ケニー・ドリューならではの解釈が加わったモダンでスタイリッシュなジャズが楽しめます。以下、収録曲ごとにその魅力を紹介します。
ビーウィッチト(Bewitched)
ミュージカルの中でも特に有名な楽曲。ドリューのピアノは、原曲の切ないロマンティックなメロディを存分に引き出しています。
ドゥ・イット・ザ・ハード・ウェイ(Do It The Hard Way)
軽快なテンポの中にもユーモアが感じられる演奏で、ドラムとピアノの掛け合いが特に魅力的です。
時さえ忘れて(Time Forgotten)
静かなバラード調の一曲。ドリューの繊細なタッチが心に染み渡ります。
ハッピー・ハンティング・ホーン(Happy Hunting Horn)
トリオの絶妙なアンサンブルが楽しめる一曲で、リズミカルなドラムが際立っています。
アイ・クッド・ライト・ア・ブック(I Could Write A Book)
原曲の持つ軽やかさを活かした演奏で、どこか希望を感じさせる一曲です。
ホワット・イズ・ア・マン?(What Is A Man?)
曲全体に漂う洗練された雰囲気が特徴的で、ケニー・ドリューのセンスが光ります。
マイ・ファニー・ヴァレンタイン(My Funny Valentine)
ジャズスタンダードとして名高いこの曲では、ピアノの哀愁漂う音色が際立っています。
ザ・レディ・イズ・ア・トランプ(The Lady Is A Tramp)
トリオの楽しさが溢れるフィナーレ的な楽曲で、スイング感が心地よい印象です。
『パル・ジョーイ』の音楽的意義
このアルバムは、ミュージカル音楽をジャズの文脈に取り込むという試みにおいて重要な位置を占めています。ケニー・ドリューの洗練された解釈によって、ミュージカルの魅力とジャズの即興性が見事に融合しています。ピアノトリオという編成の中で、オリジナルのメロディを尊重しながらも、新たな生命を吹き込む演奏は、当時のジャズ愛好家を魅了しました。
また、ミュージカル音楽を素材にすることで、ジャズが一層親しみやすいものとなり、リスナー層の拡大にも寄与しました。
まとめ:時代を超えて愛されるケニー・ドリューの名盤
『パル・ジョーイ』は、ジャズピアノの名手ケニー・ドリューが奏でるミュージカル音楽の真髄が詰まった一枚です。1957年という時代を超えて、現代のリスナーにも癒しと感動を与える作品であり、ジャズとミュージカルの両方を楽しむ人にとって必聴のアルバムです。
下記URLはYouTubeにBewitched, Bothered And Bewilderedが上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=2wLz58vC8C4&list=PLmAPU14vnV8OP3PrSyH0_M-PJY2JX217y
これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・