Ted Brown『Free Wheeling』— ウエスト・コースト・ジャズの魅力が詰まった名作
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
1950年代のジャズ — クール・ジャズとウエスト・コーストの興隆
1950年代は、ジャズの多様なスタイルが花開いた時期であり、特にアメリカ西海岸では「ウエスト・コースト・ジャズ」が大きな注目を集めました。このスタイルは、東海岸のハードバップとは対照的に、抑制されたクールなサウンドとリラックスした雰囲気が特徴です。
都会的で洗練されたアプローチを取るこのスタイルは、当時のカリフォルニアの気風を反映しており、多くのジャズファンに支持されました。
そんなウエスト・コースト・ジャズを代表する作品の一つが、テッド・ブラウンの『Free Wheeling』です。
テナーサックス奏者としてクール・ジャズを極めたブラウンが、同じくウエスト・コーストを牽引したアート・ペッパー、ワーン・マッシュと共に作り上げたこのアルバムは、リラックスしたスウィング感と高度な即興演奏が魅力です。
アーティスト紹介 — テッド・ブラウンと共演者たち
テッド・ブラウン — サクソフォニストの中間派
テッド・ブラウンは、1950年代のジャズシーンにおいて寡作ながらも重要なサクソフォニストとして知られています。
彼の音楽スタイルは、レスター・ヤングの影響を強く受けたものであり、柔らかでしなやかな音色が特徴です。ブラウンは特に、クール・ジャズや中間派と呼ばれるスタイルの中で活躍しましたが、その中でも彼独自のリリカルでメロディアスなプレイが光ります。
彼と共演したアート・ペッパー(アルトサックス)もまた、ウエスト・コースト・ジャズのアイコン的存在であり、ペッパーの感情豊かな演奏とブラウンのクールなプレイのコントラストがこのアルバムの魅力を際立たせています。
さらに、ワーン・マッシュ(テナーサックス)も参加し、三管編成での絡み合うブロウが、聴く者を魅了します。
アルバムの魅力 — リラックスしたスウィングと緊密なアンサンブル
『Free Wheeling』は、テッド・ブラウンのオリジナル曲とスタンダードをバランスよく組み合わせ、彼の音楽性を余すところなく表現した一枚です。このアルバムでは、ウエスト・コースト・ジャズ特有の軽やかなリズム感と、各プレイヤーの高度な即興演奏が楽しめます。特に、三管編成による緻密なアンサンブルとインプロビゼーションの妙技が圧巻です。
1956年11月26日 ロサンゼルス、スイングジャーナル誌選定ゴールドディスク
収録曲解説:
Aretha
アルバムのオープニングを飾る曲で、落ち着いたテンポとメロディアスな展開が特徴です。テッド・ブラウンの抑制されたサックスプレイが印象的で、ゆったりとしたリズムがリスナーをリラックスさせます。
Long Gone
哀愁漂うメロディが心に残る一曲。ブラウンのテナーとペッパーのアルトが美しいハーモニーを奏で、聴き手を引き込む展開が続きます。
Once We Were Young
優雅なバラードで、ペッパーの感情豊かな演奏が際立っています。ブラウンとペッパーの掛け合いが素晴らしく、各楽器が対話するような演奏が楽しめます。
Foolin’ Myself
スウィング感あふれる曲で、軽快なリズムとともにブラウンの滑らかなサックスが流れるように響きます。リラックスしたムードの中で、各プレイヤーの緻密な技術が光ります。
Avalon
ジャズスタンダードの「Avalon」をクール・ジャズのスタイルで再解釈した一曲。アップテンポなリズムが心地よく、ブラウンとペッパーの息の合った演奏が際立ちます。
On a Slow Boat to China
ゆったりとしたメロディが特徴の曲で、各プレイヤーの個性が存分に発揮されています。特にワーン・マッシュのソロが印象的で、全体のアンサンブルも完璧です。
Crazy, She Calls Me
ブルースフィーリングを感じさせる一曲。ペッパーのアルトサックスが繊細なニュアンスを醸し出し、ブラウンとの対比が楽しい。
Broadway
このアルバムのハイライトの一つで、軽快なテンポとキャッチーなメロディが特徴です。ペッパーとブラウンのコンビネーションが冴え渡り、聴き手を躍らせます。
Arrival
アルバムを締めくくるこの曲は、静かな情景を思い起こさせるような落ち着いたメロディが特徴です。リラックスしたムードの中にも、緊張感のあるインプロビゼーションが見事です。
ウエスト・コースト・ジャズの代表作 —『Free Wheeling』の位置づけ
『Free Wheeling』は、1950年代後半のウエスト・コースト・ジャズを代表する作品の一つであり、テッド・ブラウンの音楽キャリアにおいても特に重要なアルバムです。彼の柔らかくリリカルなテナーサックスは、アート・ペッパーやワーン・マッシュとの共演で一層輝きを放っています。このアルバムは、三者三様のプレイが絶妙に融合し、それぞれの個性が際立つ中で、緊密なアンサンブルが美しくまとまっています。
ウエスト・コースト・ジャズ特有の「クールさ」と「洗練されたリズム感」が全編にわたって感じられるこのアルバムは、ジャズファンにとって必聴の名盤です。特に、各プレイヤーのインタープレイや、緊張とリラックスの絶妙なバランスを堪能できる点で、この時代のジャズのエッセンスが凝縮されています。
結論 — ジャズがもたらす癒しと心地よいスウィング
『Free Wheeling』は、テッド・ブラウン、アート・ペッパー、ワーン・マッシュというウエスト・コースト・ジャズの名手たちが織りなす一枚で、軽やかなリズムと抑制されたエレガントな演奏が特徴です。リラックスしたい時や、心地よい音楽に浸りたい時に最適なこのアルバムは、ジャズの持つ「癒し」の力を感じさせる作品です。
秋の夜長に、このジャズアルバムを聴きながら、心落ち着くひとときを楽しんでみてはいかがでしょうか。
下記URLはYouTubeにAretha (feat. Ted Brown, Warne Marsh)が上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=yrLUKR1RFnM&list=OLAK5uy_kqpgaaEcJ8JYX9_dXtsRZcBA0JpdlrWoI
これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・