ジョン・ルイスの名盤『グランド・エンカウンター』に浸る — 魅力と背景を深掘りする至福のアルバム紹介
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
ジャズの時代背景 — 1950年代の革新と東西ジャズの潮流
1950年代は、モダンジャズが急速に進化し、東海岸と西海岸で異なるスタイルが育まれた時代です。東海岸は、スリリングでハードな「ハードバップ」が特徴的な音楽シーンを展開していた一方で、西海岸ではよりクールで洗練された「ウエストコースト・ジャズ」が支持されました。これらの2つのスタイルは、異なる地域的・文化的背景から生まれたものの、共にジャズの革新を追求していました。
そんな時代に、東海岸の代表的ピアニストであり、モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)のリーダーでもあったジョン・ルイスが、西海岸のミュージシャンたちとコラボレーションして生まれたのが本作『グランド・エンカウンター』です。このアルバムは、ジャズ界における「イースト・ミーツ・ウエスト」と称される象徴的な作品として語り継がれています。
1956年録音。スイングジャーナル誌選定ゴールドディスク
アーティスト紹介 — ジョン・ルイスと共演者たち
ジョン・ルイスは、クラシック音楽の要素をジャズに取り入れ、「室内楽的ジャズ」と称される独自の音楽性を築き上げました。彼のスタイルは、アンサンブルを重視し、メロディーとハーモニーの調和を大切にする点が特徴的です。そんなルイスは、1956年、MJQの盟友であるベーシストのパーシー・ヒースと共に、ウエストコースト・ジャズの名手たちとのセッションを行いました。
このセッションには、次のようなメンバーが参加しています:
ビル・パーキンス(テナーサックス):西海岸の重要人物であり、洗練されたプレイが魅力。
ジム・ホール(ギター):後にギター界の巨匠となるホールは、この時期にすでにその緻密な演奏スタイルを確立しつつありました。
チコ・ハミルトン(ドラムス):リズムのキレと繊細さを兼ね備えたドラマー。
アルバムの魅力 — 穏やかなリラックスムードと高度なアンサンブル
曲目リスト
1 ラヴ・ミー・オア・リーヴ・ミー
2 言い出しかねて
3 イージー・リヴィング
4 2度東3度西
5 スカイラーク
6 恋をしたみたい
『グランド・エンカウンター』は、激しい即興演奏や対決的なセッションとは一線を画し、穏やかなムードが全体を包んでいます。タイトルが示すように、東海岸(2 Degrees East)からルイスとヒース、西海岸(3 Degrees West)からパーキンス、ホール、ハミルトンという東西の名手が顔を揃えたこの作品は、互いのスタイルを尊重しつつ、調和を大切にした演奏が印象的です。
アルバムの中で特に注目すべきは、4曲目の「2 Degrees East-3 Degrees West」。この曲は、タイトル通り、東西のミュージシャンが共鳴し合う象徴的な一曲です。ジョン・ルイスのピアノは、リズムの中に洗練されたハーモニーを編み込み、聴く者をゆったりとした空間へと誘います。
他にも、以下のスタンダード曲が収録されています:
ラヴ・ミー・オア・リーヴ・ミー
言い出しかねて
イージー・リヴィング
スカイラーク
恋をしたみたい
これらの曲をルイスと共演者たちは、それぞれのスタイルを活かしつつも、心地よく調和させています。特にビル・パーキンスのサックスとジム・ホールのギターが、柔らかくも豊かなサウンドで支え、ルイスのピアノと美しいアンサンブルを生み出しています。
ジャズファン必聴の名盤 — 西海岸と東海岸の邂逅
『グランド・エンカウンター』は、当時のジャズシーンにおいて極めて貴重な「イースト・ミーツ・ウエスト」の記録です。東西のトップミュージシャンが織りなす絶妙なアンサンブルは、ジャズが持つ多様性とその美しさを再確認させてくれます。
ジャズファンのみならず、リラックスした音楽を求めるすべてのリスナーにおすすめできる本作は、まさに「癒し」と「知性」が融合した一枚です。室内楽的なアプローチでありながら、即興の醍醐味を堪能できる本アルバムを、この機会にぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
下記URLはYouTubeにJohn Lewis – Grand Encounter (1956 Album)が上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=mRM0IG68ycc
これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・