【水彩画】小石川後楽園の秋を描く（第109作）｜蓮池越しに眺める東京ドームと都市の調和

はじめに｜季節の移ろいを描く旅、水彩画とともに

皆さま、大変お待たせ致しました。

今回ご紹介するのは、2024年11月1日に取材・スケッチを行い、描き上げた水彩画第109作目です。テーマは、前作108作目と同様、東京・文京区の名園「小石川後楽園」。ですが、今回は視点を微妙に変え、同じ蓮池をモチーフにしながら、都会の建築と自然が調和する風景にフォーカスしました。

東京ドームのすぐ隣にあるこの庭園は、江戸の風情を残しながら、現代的なビル群との対比が非常に美しく、そのコントラストが描き手の心を強く揺さぶります。

小石川後楽園は、江戸時代初期に水戸藩・徳川頼房公が造園を開始し、のちに光圀（水戸黄門）によって完成された回遊式の庭園です。四季折々の美しさを見せるこの場所は、都心にありながらも静寂に包まれ、訪れるたびに心が和みます。

すぐそばには東京ドームや東京ドームホテル、文京シビックセンターといった超現代的な建築がそびえ立ち、まさに「自然と都市の融合」という、唯一無二の風景が広がっています。

私がこの作品を描いたのは、晩秋に差し掛かる11月初旬。前回の108作目を描いた時と同じ日、朝9時過ぎに入園しました。

この日の小石川後楽園は、秋晴れの空が広がり、澄んだ空気が池に反射する光を優しく包み込んでいました。園内を歩くと、すでに色づき始めた紅葉が空と池を彩り、足を止めずにはいられない光景に何度も出会いました。

109作目の構図は、前作と似た角度で蓮池を捉えながらも、左から東京ドーム、中央に東京ドームホテル、右手に住宅金融支援機構の建物他というビル群をバランスよく配置し、人工物と自然の美的調和を意識しました。

蓮池の水面に写り込む紅葉と空のグラデーション。水彩画ならではの「にじみ」を活かして、水面の柔らかさと静けさを表現したかったのですが、次からの作品に乞うご期待・・・

高層ビル群は控えめながらも確かな存在感をもって描いています。線を強くしすぎず、空気遠近法を意識して、自然との距離感を丁寧に描き分けました。

秋の紅葉は、原色を避け、若干、複数の複数の赤・橙・黄を重ねることで深みを持たせています。ただ、11月1日でしたが、芝生は夏そのままの色を維持していました。空は朝の淡いブルーから始まり、徐々にグレーがかった空へと変化させ、秋の空気感を忠実に再現しました。

小石川後楽園のように、都市と自然が同時に存在する場所は意外に少ないものです。特に、この蓮池の周辺は、自然の中に溶け込むようにして東京ドームやホテルが姿を見せる、唯一無二のビジュアルです。

この風景は、ただ美しいだけでなく、私たちの心の中に「癒し」と「安心」をもたらしてくれる存在です。それは、「都市の喧騒のすぐ隣にある静寂の空間」という、精神的な避難場所としての役割があるからかもしれません。

この日、蓮池のあたりで耳にしたのは、カワセミのさえずりと風に揺れる木々の音でした。周囲には観光客もいましたが、皆が自然と静かになっていく不思議な空気が流れており、「心を開く時間」がそこに確かに存在していました。

また、近くを歩くご年配の方が、「ここの景色を見ると、心が整うんだよ」と呟いていたのがとても印象に残っています。

今回の水彩画では、単に風景を写し取るのではなく、「その場にいたときの空気感や感情」まで封じ込めることを意識しました。

現代の都市生活に疲れた心が、ほんの少しの自然の気配で癒される。そんな体験を、見てくださった方にも共有していただけたらと願っています。

現在、園内の「延段」（えんだん）と呼ばれる石畳の通路や、中央の池「大泉水」を背景とした風景も、すでにデッサンを終えています。こちらは完成次第、順次ブログで公開予定です。

引き続き、東京という都市の中で「季節の彩り」と「癒しの時間」を探し、絵筆を進めていきます。

自然の美しさは、ただそこにあるだけで、私たちの心に変化を与えてくれます。小石川後楽園という場所を通じて、それをあらためて実感することができました。

この作品が、あなたにとっての「静かな時間」の一助となれば幸いです。

次回は、石畳の通路「延段」をモチーフにした作品をご紹介予定です。完成しましたら、ブログ・SNSにてお知らせいたしますので、ぜひブックマーク・フォローしてお待ちください。