ジャズの常識を覆した『Time Out』— デイヴ・ブルーベックが生んだ革命的アルバム
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
はじめに:『Time Out』がジャズ史に刻んだ革新
ジャズ史上、最もユニークで影響力のあるアルバムのひとつとして語り継がれるデイヴ・ブルーベック・カルテット(Dave Brubeck Quartet) の『Time Out』(タイム・アウト)。
「Take Five(テイク・ファイヴ)」 を筆頭に、奇数拍子(変拍子) を大胆に取り入れた本作は、ジャズの伝統を超えた斬新なサウンドでリスナーを魅了しました。特に、4拍子が基本のジャズにおいて、5拍子や9拍子といった変則的なリズムを駆使した ことは革命的でした。
また、本作は単なる実験的な作品ではなく、全米ヒット・チャートで最高2位を記録 するなど、商業的成功も収めました。
「ジャズは難しい」と思っている人にも聴きやすい、ポップなメロディと洗練されたアンサンブルが魅力の名盤です。
では、アルバムが誕生した背景やデイヴ・ブルーベックの功績に触れながら、その魅力を深掘りしていきましょう。
ジャズの時代背景と『Time Out』誕生の経緯
『Time Out』が発表された1959年は、ジャズの歴史において極めて重要な年でした。
1959年に誕生したジャズの名盤たち
- マイルス・デイヴィス『Kind of Blue』(モード・ジャズの確立)
- ジョン・コルトレーン『Giant Steps』(ハーモニーの革新)
- チャールズ・ミンガス『Mingus Ah Um』(モダン・ジャズの発展)
- オーネット・コールマン『The Shape of Jazz to Come』(フリー・ジャズの幕開け)
- デイヴ・ブルーベック『Time Out』(変拍子ジャズの成功)
当時、ジャズの主流はハード・バップと呼ばれるスタイルでした。しかしブルーベックは、ヨーロッパのクラシック音楽や民族音楽の影響を受けたジャズ を模索し、リズムに新たな可能性を見出しました。
『Time Out』は、彼がヨーロッパをツアーで回った際に得たインスピレーションから生まれたアルバムです。特に「Blue Rondo à la Turk(トルコ風ブルー・ロンド)」は、トルコの民族音楽のリズムから着想を得ています。
デイヴ・ブルーベックとは?先駆的ピアニストの軌跡
🎹 デイヴ・ブルーベック(Dave Brubeck, 1920-2012)
- ジャズとクラシックを融合させた革新的ピアニスト
- 変拍子を取り入れた作品で大成功を収める
- ポール・デスモンド(as)との黄金コンビ
- 全米の大学を巡る「ジャズ啓蒙ツアー」で若者にジャズを広めた
ブルーベックは、クラシックの作曲技法とジャズの即興性を融合させた独自のスタイル を確立。彼のバンドメンバーであるポール・デスモンド(Paul Desmond) の流麗なアルト・サックスと、正確なリズムのピアノプレイは、本作の成功に欠かせない要素となりました。
アルバム『Time Out』の魅力と全曲レビュー
Blue Rondo à la Turk(トルコ風ブルー・ロンド)
9/8拍子(2+2+2+3のリズム)で構成されるユニークな楽曲。
トルコの民族音楽からインスピレーションを得た、ジャズとは思えないような変則的なリズムが特徴。
Strange Meadow Lark(ストレンジ・メドウ・ラーク)
ブルーベックのクラシックの影響が色濃く出た、ゆったりとしたバラード。デスモンドのアルト・サックスが美しい。
Take Five(テイク・ファイヴ)
ジャズ史上最も有名な5拍子の楽曲。
ポール・デスモンド作曲のこの曲は、ジャズ史上初のミリオンセラー となり、世界中で愛される名曲に。
Three To Get Ready(スリー・トゥ・ゲット・レディ)
3拍子と4拍子が交互に現れるユニークなリズム。カジュアルに聴ける楽しい雰囲気が魅力。
Kathy’s Waltz(キャシーズ・ワルツ)
ブルーベックの娘キャシーに捧げられた優雅なワルツ。3拍子を基調としつつ、遊び心あるリズム展開が楽しい。
Everybody’s Jumpin’(エヴリバディーズ・ジャンピン)
スウィング感あふれるナンバー。アップテンポで勢いがあり、カルテットのアンサンブルが光る。
Pick Up Sticks(ピック・アップ・スティックス)
6/4拍子を採用した、シンプルながらユニークな楽曲。アルバムの締めくくりにふさわしいクールな一曲。
『Time Out』が与えた影響と後世へのインパクト
- 変拍子ジャズの開拓 → プログレッシブ・ロックやフュージョンにも影響
- ポール・デスモンドの美しいサックスが広めたメロウなジャズのスタイル
- 「Take Five」はジャズ初心者にも親しみやすい楽曲として定着
まとめ:今こそ聴くべきタイムレスな名盤
『Time Out』は、単なる実験的なアルバムではなく、ジャズの新たな可能性を示した歴史的な作品 です。変拍子ジャズの先駆けとして、今なお多くのリスナーを魅了し続けています。
🎷 「Take Five」をきっかけに、この名盤をじっくり味わってみてください!
下記URLはYouTubeにBlue Rondo à la Turkが上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=FqPC-BkylxA&list=PLMxkpnetcodMI06cGhDnJWIu86POfn-JJ
これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・