『アニタ・オデイ・シングズ・ザ・ウィナーズ』：ジャズの巨匠が歌い上げるビッグバンド名曲の魅力に迫る
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
1950年代後半のジャズ黄金期：時代背景とアルバムの位置づけ
1950年代後半は、ジャズがビッグバンドからスモールコンボ中心のモダンジャズへと移行する中で、スタンダードナンバーの新たな解釈が注目されていた時期です。この頃、ヴァーヴ・レーベルは優れたアーティストを多数抱え、ハイクオリティなレコーディングと洗練されたプロデュースで数々の名盤を生み出していました。
『アニタ・オデイ・シングズ・ザ・ウィナーズ』は、1958年に録音されたアニタ・オデイの代表作であり、デューク・エリントン、ウディ・ハーマン、ベニー・グッドマンといったビッグバンドの名曲を新たなアプローチで表現したアルバムです。アニタの持ち味であるリズミカルでスイング感あふれる歌唱と、マーティ・ペイチが手掛けたアレンジが融合し、ジャズヴォーカルの真髄を堪能できる内容となっています。
アニタ・オデイ：唯一無二のジャズシンガー
アニタ・オデイの背景
アニタ・オデイ（Anita O’Day）は、1920年に生まれ、20世紀を代表するジャズヴォーカリストの一人です。ビッグバンドの歌手としてキャリアをスタートさせた彼女は、独特のリズム感とスキャット技法で、従来の「ジャズシンガー像」を覆しました。特に「歌う楽器」と評されるそのスタイルは、器楽的なアプローチが特徴で、同時代の歌手とは一線を画しています。
本作での共演者
『アニタ・オデイ・シングズ・ザ・ウィナーズ』では、アレンジャーであるマーティ・ペイチをはじめとするトップクラスのジャズミュージシャンが参加。豪華なビッグバンド編成によるサウンドが、アニタのヴォーカルをより引き立てています。
アルバム『アニタ・オデイ・シングズ・ザ・ウィナーズ』：内容と聴きどころ
このアルバムでは、ジャズ史を彩るビッグバンドの名曲がアニタの歌声によって再構築されています。それぞれの楽曲が持つ物語性やリズムの躍動感を最大限に引き出し、新たな命を吹き込んでいる点が魅力です。以下は特に注目すべき収録曲とその聴きどころです。
収録曲の解説
A列車で行こう（Take the ‘A’ Train）
デューク・エリントンの名曲を取り上げた一曲。アニタのスウィング感とスキャットが曲を新鮮な響きに仕上げています。
テンダリー（Tenderly）
ゆったりとしたバラードで、アニタの情感豊かな歌声が光ります。彼女の細やかな表現力が心に沁みる一曲です。
チュニジアの夜（Night in Tunisia）
ダイジー・ガレスピーの名曲で、複雑なリズムとメロディが特徴的。アニタの卓越したリズム感が楽曲の魅力を倍増させています。
シング・シング・シング（Sing, Sing, Sing）
ベニー・グッドマンの代名詞ともいえる曲で、ビッグバンドの迫力あるアレンジにアニタのエネルギッシュなヴォーカルが絡む圧巻の演奏です。
マイ・ファニー・ヴァレンタイン（My Funny Valentine）
ジャズの定番バラードを情感豊かに歌い上げた一曲。アニタの柔らかな声が楽曲のロマンティックなムードを引き立てます。
南京豆売り（Peanut Vendor）
ラテンのリズムを取り入れた楽曲で、アニタの幅広い表現力が発揮されています。
ピール・ミー・ア・グレープ（Peel Me a Grape）
ボーナストラックとして追加収録された洒脱なナンバー。アニタの遊び心ある歌唱が楽しい一曲です。
音楽的特徴とアルバムの魅力
『アニタ・オデイ・シングズ・ザ・ウィナーズ』は、アニタのリズミカルで自由なヴォーカルが最大限に発揮されたアルバムです。ジャズスタンダードを題材にしながら、どの楽曲も新しい表情を持つのが特徴です。マーティ・ペイチによるビッグバンドアレンジは、楽曲にドラマティックな深みを加え、アニタのヴォーカルを際立たせています。
また、収録曲のバリエーションが豊富で、スウィング、バラード、ラテンといった多様なスタイルを楽しめる点も魅力です。
まとめ：ジャズヴォーカルファン必聴の一枚
『アニタ・オデイ・シングズ・ザ・ウィナーズ』は、アニタ・オデイのヴォーカリストとしての真髄を堪能できる一枚です。ビッグバンドの名曲を新たなアプローチで演奏し、ジャズヴォーカルの奥深さを再発見させてくれます。
初心者からコアなジャズファンまで幅広いリスナーにおすすめできるこのアルバムは、ジャズの魅力を改めて感じさせてくれる作品です。
時代を超えて色褪せることのない名盤を、ぜひお楽しみください。
下記URLはYouTubeにAnita O’Day – FOURが上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=g9gD2EOQBpQ
これから、徐々にステレオ録音（1958年前後～）、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・
