マイルス・デイビス『ポーギー&ベス』:モードジャズとオペラが融合した歴史的名盤
最後にYouTubeに上がっていた収録曲を貼らせて頂いています。
ジャズの時代背景:1950年代後半のジャズシーン
1950年代後半、ジャズは大きな変革の時代を迎えていました。それまで主流だったビバップからクールジャズやモードジャズへの移行が進み、アーティストたちは新しい表現方法を模索していました。この時期、マイルス・デイビスはジャズ界の最前線で活躍し、常に新しいサウンドを追求していました。
特に1958年は、モードジャズの基盤が築かれつつある重要な年でした。この時期に登場した『ポーギー&ベス』は、ジャズが持つ即興性とガーシュウィンのクラシック音楽が融合した画期的な作品として評価されています。
アーティスト紹介:マイルス・デイビスとギル・エヴァンスの黄金コンビ
マイルス・デイビス
1926年生まれのマイルス・デイビスは、20世紀を代表するジャズトランペッターであり、数々の名盤を生み出しました。1955年にColumbia Recordsと契約した彼は、1957年に発表した『マイルストーンズ』や1959年の『カインド・オブ・ブルー』でモードジャズの可能性を追求。その一方で、編曲家ギル・エヴァンスと協力し、壮大なオーケストラ作品を手掛けるようになります。
ギル・エヴァンス
ギル・エヴァンスは、ジャズの編曲家として独自の地位を確立した人物です。彼の緻密で大胆なアレンジは、クラシック音楽やポピュラー音楽とジャズを結びつける役割を果たしました。エヴァンスはマイルスと数々のコラボレーションを行い、『マイルス・アヘッド』『スケッチ・オブ・スペイン』など、今も語り継がれる名作を生み出しました。
アルバム『ポーギー&ベス』の魅力
1958年に録音された『ポーギー&ベス』は、アメリカの作曲家ジョージ・ガーシュウィンが手掛けたオペラ『ポーギーとベス』を基にしたジャズアルバムです。この作品では、ガーシュウィンが描いた物語と音楽が、ジャズの即興性とギル・エヴァンスのアレンジによって再解釈されています。
アルバムの制作背景
ガーシュウィンの『ポーギーとベス』は、黒人社会を題材にしたオペラとして1935年に初演されました。その旋律は美しく、ドラマティックな物語とともに多くの人々を魅了しました。これをマイルスとエヴァンスが取り上げ、オーケストラを活用した編曲にジャズのエッセンスを加えたのが本作です。
アルバムでは、マイルスのトランペットがストーリーテラーのように物語を紡ぎ、エヴァンスのオーケストラが背景に豊かな情景を描きます。この緻密な音楽設計が、クラシックとジャズの枠を超えた傑作を生み出しました。
曲目リストと詳細解説
本アルバムには、全15曲(ボーナストラックを含む)が収録されています。それぞれの楽曲は、オペラのストーリーや情景を映し出しつつ、ジャズならではの即興性とスウィング感を感じさせます。
禿鷹の歌
アルバムの冒頭を飾る壮大な楽曲。マイルスのトランペットが禿鷹の飛翔を描くように響きます。
ベスよ,お前は俺のもの
主人公ポーギーの深い愛情を象徴する楽曲。甘く切ないメロディが印象的です。
ゴーン
ギル・エヴァンスの巧みなアレンジが光る曲。多層的なハーモニーが聴きどころです。
ゴーン,ゴーン,ゴーン
前曲のモチーフを発展させたアレンジで、ポーギーの決意を感じさせます。
サマータイム
アルバムの中でも特に有名な楽曲。夏の情景を感じさせる穏やかで美しいメロディが際立ちます。
ベスよ何処に
主人公の喪失感を描いた楽曲。トランペットの音色が深い感情を表現しています。
祈り
静謐で崇高なムードを持つ曲。オーケストラの壮麗な響きが聴きどころ。
漁夫と苺と悪魔蟹
ガーシュウィンのオペラの中でも特にドラマティックな場面を描写した曲。
マイ・マンズ・ゴーン・ナウ
悲しみと希望が交錯する楽曲。マイルスの抒情的な演奏が心に響きます。
ご自由に
明るさと軽快さが特徴の楽曲。ジャズのスウィング感が強調されています。
ほら,蜂蜜売りだよ
オペラの楽しい場面を描いた曲。リズミカルで親しみやすい旋律が魅力です。
愛するポーギー
ポーギーの深い愛情を表現する感動的な楽曲。
13-15. ボーナストラック
「ニューヨークへボートが」など、オリジナルLPには収録されていない未発表テイクも含まれており、ファンには必聴です。
アルバムの意義と評価
『ポーギー&ベス』は、マイルス・デイビスの多彩な音楽的才能とギル・エヴァンスの編曲技術が結実した作品です。ジャズ史においても、クラシックとジャズの融合を試みた先駆的なアルバムとして高く評価されています。
特に「サマータイム」や「愛するポーギー」といった楽曲は、アルバムの枠を超えて多くのリスナーに親しまれ、ジャズスタンダードとしても広く演奏されています。
まとめ
『ポーギー&ベス』は、マイルス・デイビスとギル・エヴァンスのコラボレーションが生み出したジャズの歴史的名盤です。このアルバムを通じて、ジャズが持つ即興性と物語性の奥深さに触れることができます。
ジャズの魅力を堪能したい方、あるいはガーシュウィンの音楽を新しい視点で楽しみたい方に、ぜひおすすめの一枚です。
下記URLはYouTubeにMiles Davis – Porgy and Bess – 1958 -FULL ALBUMが上がっていましたので貼らせて頂きました。
https://www.youtube.com/watch?v=SkVKcAm2rJg
これから、徐々にステレオ録音(1958年前後~)、ハードバップ時代のアルバムのご紹介になってきますのでお楽しみに・・・